『少林寺VS忍者』 | 続・功夫電影専科

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香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「少林寺VS忍者」
中華丈夫
Heroes of the East
Shaolin Challenges Ninja
1978

▼かつてキングレコードのDVDが発売されるまで、日本で唯一リリースされていた純正なショウブラの功夫片である。主演は劉家輝(リュウ・チャーフィ)、対する相手には倉田保昭が扮しており、そのタイトルから功夫映画関連ではないサイトでもよく取り上げられている。しかしこの作品、見方を変えれば功夫映画史上非常に希な作品であると言えるのだ(後述)。

■ストーリーは様々なサイトで紹介されているので詳しい言及はしないが、内容はあっさりとしたコメディ仕立ての話だ。御曹司の劉家輝は日本人の妻・水野結花と結婚する。思ったより美人だった水野にすっかりお熱な劉家輝だが、実は水野は日本武術の達人だった。中国武術の達人である劉家輝とはことごとく対立を繰り返し、遂に水野は日本へ帰ってしまう。
なんだかんだで水野の事が好きだった劉家輝は、書生の入れ知恵で水野に挑戦状を送って帰ってこさせようとするが、これを水野の幼なじみである倉田さんら日本武術家が読んでしまったからさあ大変!劉家輝と倉田さんらの7番勝負が始まってしまうのだった…。
さて、ここで倉田さんが引き連れてきた日本人武術家軍団だが、実はほとんどのメンバーが倉田さんと共演及び対戦経歴のある面子なのだ。
最初に対決する剣士・原田力は『直撃!地獄拳』で倉田さんを不意打ちで倒し(笑)、のちに『女必殺拳・危機一発』ではリマッチを果たしている。特に前者では前もって紹介されていた強豪たちを差し置き、ラストバトルでは千葉ちゃんと一進一退のアホアホなバトルを繰り広げていた。
続いて登場する空手家・角友司郎は、倉田さん主演のTVドラマ『闘え!ドラゴン』にて拳を交えており、千葉真一とも『激突!殺人拳』で闘っている。竜咲隼人は『Gメン75』の香港ロケ編の常連で、当然師匠の倉田さんとは対戦済み。青汁で有名な八名信夫も前述の『闘え!ドラゴン』で倉田さんと、『影の軍団4』で千葉真一と手合わせをしている。
顔芸で一際異彩を放っているサイの使い手・中崎康貴もまた『Gメン75』の香港ロケ絡みで共演があるし、更に言えば水野も『Gメン75』の倉田さん降板回に出演している。唯一、柔道家・大前釣との共演が確認できなかったが、彼等の出演が倉田さん絡みという事実は興味深い。
恐らくは倉田さんが彼等を連れてきたのだろうと思われるが、倉田さんがいかに香港映画界で信頼を得ているか、そしてどれだけの影響力があるかが窺い知れて面白い。ちなみにストーリーの方は劉家輝VS倉田さんの濃いバトルの末に誤解が解けて和解するという〆になる。

▲…と、ここで本作を見てきて面白い事に気付いた。この映画には悪役が存在しないのだ。功夫映画は主人公と仇討ち相手がいればすぐに出来上がる。特にこういった日本人を扱った映画なら尚更だ。
しかし、本作は単に誤解が生じただけで、最後に手を取り合って和解を果たしている。考えてみて欲しい。決定的な悪役のいない功夫片が本作以外にあるだろうか?武侠片にはなんとなくありそうな感じがするが、それでいて本作では熱い激闘が幾度と無く繰り広げられている。
不用意な血も流れず、1人として死人も出ず、それでいて悪党がおらず、加えてアクションバリバリの功夫片なんて、まさに本作だけなのだ!これこそ実に画期的な試みであったと言えよう。個人的にも劉家良(ラウ・カーリョン)監督作の入門編として是非見て頂きたい一片。これは必見です!