
「マッド・リベンジャー/怒りの鉄拳」
原題:HARDCASE AND FIST
製作:1987年
●『ゴースト・ハンターズ』への出演により、黄家達(カーター・ウォン)はハリウッドで名前を知られる事になります。折りしも、当時のアメリカでは格闘映画というジャンルが成長期を向かえ、セガールやヴァンダムらの出現が目前に迫っていました。この当時、格闘映画はチャック・ノリスとニンジャ映画が主流でしたが、そこに黄家達も参入していきます。
本作は『ゴースト・ハンターズ』に出演して間もない彼を起用した作品で、アメリカの小プロダクションが製作した低予算アクション映画です。特にビッグな俳優が出演しているわけでもなく、黄家達とテッド・プライアーの2人が巨悪に立ち向かう様子を描いた、テンプレートな作品となっています。
物語は、ある組織に濡れ衣を着せられてムショ入りしたテッド刑事が、ベトナム戦争の戦友であり組織の一員だったトニー(演者は後述)の助けを借りて脱獄。仲間を失いながらも、誘拐された恋人を助け出して終劇となります。黄家達はテッドと同室の囚人として登場し、別れた妻にひと目会いたいと願う「もう1人の主役」を演じていました。…と、こう書くと悪くないように見えますが、実際は非常にアラの目立つ作品になっています(爆
まず本作は全体的に演出が単調で、カーチェイスやアクションがあまり派手に見えません。ストーリー展開もバランスが変で、主役となるテッドのキャラクター描写が少ない反面、途中で死ぬはずのトニーの設定は妙に充実。それでいて、彼が死ぬシーンではテッドが全くのノーリアクションだったりと、本作は終始こんな感じで進んでいきます(ラストも敵のボスを放置したまま終了)。
一方、格闘シーンでは黄家達の存在が光っていて、テッドがモタついてる脇でビシバシと俊敏な殺陣を演じています。当時の格闘映画としては充分良質なファイトを見せていますが、難点は絡み役の動きが鈍いこと。唯一、ストリップバーの乱闘では素早いザコが数人いたので(エンドクレジットを見ると韓国系?のスタントマンが参加している模様)、そこだけは見応えのあるアクションに仕上がっていました。
なお、前半においてテッドや黄家達以上の存在感を示したトニーですが、演じているのは監督のトニー・ザリンダスト。恐らく予算節約のために出たのだと思われますが、さすがに主役まで喰ってしまうのはマズイような…(汗
しかし作品の出来はさておき、当時の功夫スターとしては例の無い「香港や台湾の資本が介入していない純粋なアメリカ映画への主演」を成し遂げているため、黄家達にとっては重要な作品だったと言えるはずです(その後、彼は2000年にシンシア・ラスロック主演のハリウッド映画『TIGER CLAWS 3』にも出演)。
そして90年代になると、黄家達は懐かしの香港へと戻ります。この頃、映画界では武侠片ブームにより多くのワイヤー古装片が、そして現代動作片が大量に作られていました。80年代に失速してしまった功夫スターにとって、これらの作品は再起を賭けたチャレンジの場となり、かつての名優たちが次々と名乗りを上げていったのです。(次回へ続く!)