『龍形刀手金鐘罩』 | 続・功夫電影専科

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香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


龍形刀手金鐘罩
英題:The Magnificent/Dragon Master
製作:1979年


▼今月の黄家達(カーター・ウォン)特集もいよいよ今回で後半戦に突入。ここまで長々と70年代の作品ばかり紹介してきましたが、それも本項で完結となります。何故こんなに70年代の作品が多かったのかと言うと、この年代に黄家達の転機となる出来事が多かったためで、80年代以降の出演作が激減してしまったことも原因のひとつだったりします。
 80年代は香港・台湾映画界の近代化が加速し、旧来の功夫スターが次々と第一線から脱落していきました。アイドル的な人気を持つ孟飛(メン・フェイ)、郭南宏作品で活躍したことのある田鵬(ティン・パン)でさえ、80年代でフェードアウトしていったのです(※孟飛はのちに復活)。
このことは黄家達も例外ではなく、70年代最後の年となった1979年は彼にとっても節目の年となりました。今回彼が主演したこの映画は、まさに黄家達の最盛期を締めくくるに相応しい作品に仕上がっています。製作はあのフィルマークの親会社・通用影業有限公司ですが、スタッフやキャストは驚くほど豪華。一部出演者が同時期に作られた『浪子一招』と被っていますが、本作も負けず劣らずのメンバーで勝負に出ています。

■それは清朝が倒れて新政府が樹立されたころの時代…。清の残党である陳星(チン・セイ)は、朝廷の復興を企んで暗躍を続けていた。それを阻止せんと政府軍の[上下]薩伐(カサノバ・ウォン)が立ちはだかるが、一歩及ばず返り討ちに。同僚の黄家達は清朝王族の元を訪れるが、ほどなくして[上下]薩伐は帰還を果たした。
不穏な動きを見せる清朝残党に対し、黄家達たちも行動を開始していくのだが、残党の中でも異変が起きていた。自らがトップに立とうと目論む陳星により、残党をまとめていた王族の長が捕縛されてしまったのだ。同じ頃、単独行動を取っていた黄家達は、長の娘・龍君兒(ロン・チェンエール)と遭遇。陳星の差し金で暗殺されそうになった彼女を助け、真に倒すべき相手が陳星であると確信する。
 陳星は力強い拳法に加え、鐵布杉に似た金鐘罩という技を習得していた。巨悪を倒すため、黄家達と龍君兒は一致団結して特訓を開始する(BGMが『ドラゴン太極拳』のテーマ!)。修行を一通り終えた黄家達はいったん自陣に戻ったが、陳星の罠によって[上下]薩伐が倒され、龍君兒が捕らわれの身になってしまう。
程なくして王族の長が処刑され、龍君兒の命運もこれまでか…と思われたその時、黄家達が颯爽と現れた!かくして黄家達VS陳星の決戦が始まるが、最後に迎えた結末は意外なものだった…。

▲本作は上記に書かれた出演者以外にも、多くの著名人が端々に登場しています。前半で陳星を襲撃する刺客に扮しているのは巨龍(ドラゴン・リー)と崔旻奎(マーティン・チュイ)、陳星の特訓相手としてボコられる配下の1人に鄭真化(エルトン・チョン)、龍君兒を狙う刺客に劉鶴年、そして陳星の密偵としてあの何誌強(ゴッドフリー・ホー)まで参加しています。
この豊富なキャストを見ているだけでも本作は楽しいのですが、物語やアクションの完成度は平均以上。ストーリー面では、かつて銀魔王を演じた黄家達が似たような技に立ち向かう展開、意外に登場頻度が高くて美味しい役を演じた陳少龍などに目を惹かれます。
 功夫アクションもスピード感に溢れ、高いクオリティを保持していました。とりわけラストの接戦は見応え十分で、龍君兒を交えてのバトルは一見の価値アリです。陳星の体に隠された弱点を探り、意外な援軍によって決する勝負の行方、そして土壇場で迎える衝撃の決着!黄家達と陳星は何度も闘っていますが、もしかしたら本作がベストバウトなのかもしれません。でも、金的を打つときの音が「ビヨーン!」なのはどうにかして欲しかったなぁ(苦笑
さて、映画界は80年代を境に新たな段階へと突入しましたが、黄家達は他のスターと同様に伸び悩んでいました。しかし、予想外の場所から救いの手が伸びてきました。そう、『ゴースト・ハンターズ』でハリウッド映画に出演したことで、黄家達に再び転機が訪れるのです。(次回へ続く!)