『カンフー・クエスト/覇者の剣』 | 続・功夫電影専科

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香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「カンフー・クエスト/覇者の剣」
原題:南龍北鳳西山虎/隱侠恩仇録
英題:The Mysterious Heroes/Wu Tang Swordsman
製作:1977年(1979年説有り)

▼多分このブログを見ている人は既にご存じかと思いますが、この秋に倉田保昭と協利電影の功夫片が4本ほどリリースされるそうです突然振って沸いたような話で私も驚いていますが、よもや協利作品が日本でこうしてソフト化されるなんて本当にビックリです。今回発売されるのは倉田保昭の『大追踪』『怒雙衝冠』と協利の『猴形扣手』『十大殺手』で、このうち『猴形扣手』は当ブログでレビュー済みなので、気になる方はご参照を。
 知らない人に説明すると、協利電影とは質の高い作品造りと顔合わせを売りにしていた独立プロダクションで、功夫映画ファンなら絶対に見るべきと言える名タイトルを幾つも世に送り出している。私は『鷹爪鬼手』『識英雄重英雄』『懲罰』『天才功夫』『猴形扣手』等を見てきたが、どれもこれもストーリーに一捻りが加えられており、それでいて功夫アクションも趣向を凝らした物ばかり。ここまでレベルの高い作品が何故今まで日本で紹介されなかったのかが不思議なところだが、実は一本だけ日本でリリースされた協利作品が存在しており…ということで、今回は協利作品の発売を記念して本作を取り上げてみようと思います。

■明朝末期、とある街を支配していた名士・王侠は最強の剣士(石堅)が持つ宝剣を狙ったが、その石堅はどこかへ行方をくらました。消えた石堅を追って多くの刺客が錯綜する中、謎の侠客・黄家達(カーター・ウォン)は自ら石堅の名を名乗って暗躍を続けていた。彼は自身が最強の剣士となるために、そして一族の仇である石堅を討つために行動していたが、彼の前に王侠が立ちはだかる。王侠は石堅を知る者を次々と消し去っていくが、当の石堅は王侠の手によって地下牢に捕らえられていた。
 黄家達は武當剣使いの上官靈鳳(シャン・カン・リンホー)と合流し、物乞いの金童(クリフ・ロク)の協力を得て王侠の屋敷へ潜入。脱出に成功した石堅は自分の家族が王侠によって破滅に追い込まれた事を知り、再び王侠の元へ戻ると敵勢をことごとく切り伏せ、金童を失いながらも王侠を討ち取った。一方、あくまで最強の座を追い求める黄家達は石堅との決闘を望むが、闘いに虚しさを感じていた石堅は黄家達に勝ちを譲った。
しかし最強となった黄家達には、かつて最強だった石堅と同じ修羅の日々が待ち構えている。その事と衝撃的な真実を師から告げられた石堅は、黄家達に自らの力を知らしめると強敵・天外四魔(うち1人が馬場)との闘いに赴く。全ての罪を償うため、石堅は剣を振るうが…。

▲あんまり細かく書いてしまうとネタバレになるので粗筋紹介はこの辺で。
今回の協利は黄家達と上官靈鳳という台湾映画おなじみの顔を起用し、ベテラン石堅をアクセントに加えた渋いキャストを投入。武術顧問に陳秀中を起用しているので功夫アクションに抜かりは無いが、本作の肝は重厚なストーリーにある。武侠片らしい謎が謎を呼ぶ序盤から始まり、王侠との確執を描く怒涛の中盤を経て、終盤は「最強の先に待ち受けるものとは何か?」という大きなテーマを扱っているのだ。
 功夫片や武侠片では愛憎劇や悲恋・仇討ちなどの一貫したテーマは多々見られるが、本作は武術の頂(いただき)に達した男の悲劇という類を見ない題材を取り上げており、とかく裏切りが跋扈しがちな武侠片というジャンルに新風を吹き込んでいる。『識英雄重英雄』でデブゴン映画的なアプローチに挑み、『懲罰』でワールドワイドなロケを行い、『天才功夫』で最初から最強の主役を打ち出してきた協利電影だが、本作でもその多角的な視点は陰りを見せていない。これには流石と言うほか無く、改めて協利電影の凄さを認識した次第である。
監督が陳少鵬なので功夫アクションの割合は多く、いつもならもっさり気味になりがちな黄家達や上官靈鳳も本作では見事な武打シーンを披露。とりわけ最強の剣士を演じた石堅の存在感は素晴らしく、オープニングでの2度にわたる演舞や黄家達との対戦では年齢を感じさせないファイトを演じ、天外四魔を相手取って闘うラストバトルではほとんどスタントを使わない奮闘ぶりを見せている。『龍形摩橋』『狼狽爲奸/狼狽為奸』の石堅も良かったが、個人的には本作の石堅が一番印象に残りました。
 こうなれば今回協利作品をリリースしてくれたメーカーさんには、是非とも本作もDVD化して欲しいところですが…とりあえずは秋に発売される4タイトルを待つことにしましょう(笑