
天使特警/野戰神風
英題:Angel Force
製作:1991年
▼80年代は香港映画にとって大きな転換期となる時代だった。ジャッキーやサモハンといった時代の旗手たちは現代劇へ視点を移し、『悪漢探偵』という傑作の登場が全ての流れを決定付けた。これにより、かつて功夫片で成功したスターたちにとって苦闘の時代が始まることとなったのだ。ある者は大陸に渡って中国産の功夫片に行き場を求め、またある者は台湾に逃れてニンジャ映画にしがみついた。監督業に目覚めて流れを乗り切った者もいれば、ハナから流れに乗ろうとしないで独自路線を突き進んだ者も出てくるなど、80年代終盤の香港映画界は70年代とは違った意味で群雄割拠の時代だったと言っても過言ではないだろう。
その流れも90年代に復活した古装片ブームによって落ち着くのだが、地に足を着けずピョンピョンと飛び回るアクションは明らかにかつての功夫片とは別物だった。動作片・古装片・そして女闘美系列が入り乱れていた90年代の香港映画界…果たしてかつての功夫スターたちは、そこに一体何を見たのだろうか?今回はそんな時期の動作片に迫ってみたいと思う。
■本作は『天使行動』にタイトルは似ているが無関係の作品。李賽鳳(ムーン・リー)と林俊賢の刑事コンビが、成奎安の組織が起こした要人誘拐事件に挑む様が描かれていく。
捜査の過程で謎多き男・呉岱融と接触した2人は、敵地の所在を掴んでタイの奥地に向かったが、暗殺者・高城富士美(何故かノンクレジット…カメオ出演か?)の襲撃に遭って林俊賢が負傷。呉岱融と共に陳光が指揮するコマンド部隊の協力を仰ぐと、死闘の果てに人質の奪還に成功した。あとは成奎安をパクれば全てが丸く収まるかと思われたが、実は李賽鳳の上司である龍方(ロン・フォン)が成奎安を操っていた黒幕だったのだ(でも龍方だから画面に出ただけで悪党であることがモロバレ・笑)。
計画(何の?)を台無しにされた龍方は、さっそく李賽鳳ら3人の始末を成奎安に任せるが…。
▲平均的な完成度を保っており、功夫アクションやスタントシーンなどでアクセントを付けているが、どこか物足りなさを感じてしまう作品だ。
出来は決して悪く無いのだが、本作ならではの要素というものがあまり見えてこないのが欠点で、観客にとっては「いつもの動作片」程度にしか感じられないのも痛い。李賽鳳ファンなら見て損は無いかもしれないが、あまり華やかな作品でない事だけは肝に銘じておいて欲しいところだ。功夫アクションは李賽鳳VS王龍威のバトルが意外と熱いが、ラストのVS成奎安は中途半端な出来でちょい残念。龍方が出てきたときは『新龍争虎鬥』のリターンマッチ実現かと期待したが、本作での龍方はヘタレなボスだったのでこちらも肩透かしを食らってしまいました。
ところで話は前フリから続くが、動作片へ居場所を模索した者の中でも最も変り種だったのが王龍威である。王龍威は張徹(チャン・ツェー)の監督作品で映画界にデビューした人で、演技こそ代わり映えしないがドッシリとした重みのあるアクションが強みの猛者だ。ショウブラで大量の作品に悪役として出演した事から、私は彼を"ショウブラの石橋雅史"なんて呼んでいるが、他にもサモハンと対決した『燃えよデブゴンお助け拳』、同期の梁家仁と闘った協利作品『識英雄重英雄』、唯一の主演作である『バトル・フラッシュ』等々、ショウブラ以外の仕事でも印象的な姿を見せていた。
ここで普通なら単なる悪役スター止まりになりそうなところだが、彼は1985年に製作した『山東狂人』で監督業に目覚め、90年代には劉徳華(アンディ・ラウ)作品などのメガホンを取るようになっていくのだ。その後は役者としても平行して活躍し、古装片にも挑むなど幅広い才能を見せていくが、スクリーンで見せる没個性的な姿とは全く正反対なマルチっぷりが面白い。ちなみに本作の監督は『中国超人インフラマン』『崇山少林寺』の華山で、これが彼の最後の監督作となった。歩む者もいれば足を止める者もいる…という事なのだろうか。