『龍形摩橋』 | 続・功夫電影専科

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香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


龍形摩橋
英題:Ring of Death
製作:1980年

▼『蛇拳』『酔拳』は大ヒットを飛ばしたが、ジャッキーと思遠影業との契約はその2本の間だけの話。このあとジャッキーは羅維プロに戻り、取り残された形となった呉思遠(ン・シーエン)はジャッキー不在の状況で、必然的に『蛇拳』『酔拳』を超えるか同等の作品を創り出していかなければならなくなった。そうして生まれたのが袁家班の『南北酔拳』やノンスター映画の『雙辣』であり、専属のスターこそいないものの、優れた作品を次々と作り出していった呉思遠の手腕は流石としか言い様が無い。
本作は『蛇拳』で傅聲(アレクサンダー・フーシェン)と共に主演候補に挙がっていた金童(クリフ・ロク)が主演に収まった作品で、出演者も『蛇拳』『酔拳』系の顔で締められている。これである程度の出来は保障されているが、それだけではない作品に仕上がっているのは、やはり呉思遠の采配によるものだろう。

■片田舎で母と静かに暮らしていた金童は、あるとき極悪坊主の李海生をいさかいで殺めてしまう。実は金童、農作業によって基礎体力が培われていたのだが、人を殺してしまったとあってはここにはいられない。母から宮仕えをしている父の存在を知らされた金童は、父がいるという将軍の宮殿に向かった。
ところがその父というのが偉い将軍であり、貧しい身なりで現れた金童を疎んじて、とっさに臣下を父親に仕立て上げてしまう。宮殿で下働きに収まる金童だが、彼は功夫を習いたくてしょうがない。その一方で石天や蒋金&張華&権永文らのシゴキに耐える日々が続いたが、かつて食い逃げしようとした所を助けた石堅(シー・キェン)から功夫を習えることになった。
実は石堅には林瑛という妻がおり、違う流派であることから夫婦喧嘩の毎日を送っている。石堅からは力強い"龍形"を、林瑛からは流れるような"摩橋"をそれぞれ教わる金童。しかし同時に異なる拳法を叩き込まれたせいか、ついには体調を崩して倒れてしまった。その後も同時に異なる治療を受けた金童は危篤状態に陥るのだが(爆笑)、偶然から2人の"龍形"と"摩橋"が元はひとつの拳法だった事が発覚。こうして金童は"龍形摩橋"の使い手となるのだった。
腕を上げた金童は石天や権永文たちを一蹴するが、将軍の話を盗み聞きしていた金童は自分が将軍の息子であることを知ってしまう。悲しみに暮れる金童は絡んできた侍を蹴散らすのだが、彼らは近々開催される国際武術大会の出場者であった。この大会は国の威信がかかった大事な大会で、将軍の下にもその話は舞い込んでいたのだ(将軍側の出場選手は権永文)。金童の腕に感服した日本人は、ヤケになっていた金童を侍として出場させる事に。
かくして、皇帝が謁見する中で武術大会は幕を開けるのだが、ロシア特使のロイ・ホランが呼び寄せた強力助っ人・黄正利(ウォン・チェン・リー)が猛威を振るっていた。その外道ファイトには権永文も倒され、続いてサムライ姿の金童が躍り出るが…?

▲若干ストーリーの方が分離してしまっている気がしないでもないが(特に石堅の下で修行する場面が浮いている)、コメディと功夫アクションのバランスが取れた良質の作品である。
筋書きを見ても解るとおり、本作も『雙辣』と同様にコメディ功夫片でありながら仇討ちや奇妙な修行といった定石を踏まない、他とは全く違った作品作りに徹している。思い返せば、呉思遠はルーティンワークなストーリーから一歩も二歩も進んだ作品をこれまでも作ってきた。抗日功夫片の『餓虎狂龍』、マラソンファイトを構築した『帰ってきたドラゴン』等々…。
普通ならワンパターンな話になりそうな題材から、呉思縁はいつも新しい何かを模索してきた。今回もジャッキー不在のコメディ功夫片でここまでの映画を作り上げる事が出来たのだから素晴らしい限りだ。本当に呉思遠という男は独立プロのパイオニア(開拓者)だったことがよく解る。
ちなみに武術指導は『蛇拳』『酔拳』の徐蝦と、のちに『龍の忍者』を担当する事となる元奎&孟海コンビ。元奎が『龍の忍者』でメガホンを取るのは、本作から僅か2年後の事である。