『雙辣』(2) | 続・功夫電影専科

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香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


雙辣
Two Fists Against the Law
1980

※…(1)からの続きです。
黄正利は徐忠信がすぐに詐欺師である事を見抜き、自慢の蹴り技で彼を捕らえた。続いて班潤生の両替屋に乗り込んだ黄正利だったが、既にそこはもぬけの殻…この時、班潤生は黄正利の屋敷へ向かい、徐忠信を助け出していたのだ。
ここで諦める2人ではない。次に班潤生は何故か包帯ぐるぐる巻きのミイラのような格好で黄正利の屋敷に現れる。実は先程ボコボコにされたニセ石天も包帯だらけの体だったので、ニセ石天と入れ替わって屋敷内を探索しようと画策したのである。しかし黄正利は鋭く、班潤生は正体を見破られてしまった。そこから逃げる際に本物のニセ石天と入れ替わって事なきを得るが、黄正利はそうとは知らずに自分の息子を蹴り殺してしまった。
その隙に金塊の入っている箱を奪取した班潤生たち。ウハウハで箱を開けようとしたが、そこにメルビンが現れた。メルビンは「よくやった…これで黄正利たちに一矢報いる事ができたよ…」と、実は班潤生たちがこうすることを黙認して脱獄させた経緯を語った(なんだか『五福星』みたい)。「警察に利用されたのは癪だが、まぁでも金塊は手に入ったんだし!」と金塊の包みを解く2人。ところが、中に入っていたのは金塊ではなく、ただの石だった!?
「どういうことなんだよ!?」とメルビンに詰め寄る2人。メルビン曰く、そもそも最初にニセ石天に奪われた時点から既に本物の金塊はそこに無かったと言う。いくらなんでも、悪党の手にみすみす金塊を渡すような事はしないとか…そしてメルビンは「ついでに金塊護送の護衛もしてくれないか?今度は報酬もちゃんと払う!」とムシの良すぎる提案を持ち掛けた。もちろん班潤生たちは「自分のケツは自分で拭きな!」とメルビンを見限った。
黄正利がやって来ることは必至だ…良い考えが浮かばず頭を抱えるメルビン。そんな彼を案じた赤鼻&出っ歯の2人は、危険を承知で金塊の護送へ向かった。荒野(『嵐を呼ぶドラゴン』のラストに登場したあの丘)をひた走る赤鼻&出っ歯だが、出てきた黄正利の猛攻に必死に抵抗するも、手も足も出ずに殺されてしまう。何とかその時、箱の中に金塊の代わりに仕掛けたておいた矢が黄正利の胸に刺さったのだが…。
程なくして、メルビンの元に切断された鼻と歯が持ち込まれた。ドジだが信頼していた部下の死に、初めてメルビンは自ら行動を起こす!今度は自ら金塊護送に出向き、黄正利と決闘を望むメルビン。ここで黄正利VSメルビンという珍しい対決がチラっとあるが、いくつか黄正利の蹴りがマジでヒットしている箇所があるが…メルビン大丈夫か!?
結局、やはりメルビンも敵わずに瀕死の状態だ。「またけしからん仕掛けでもしているんだろう!」と黄正利が箱を開く…が、そこから現れたのは班潤生と徐忠信だった!メルビンに男気を感じた2人は彼を信じ、黄正利とのバトルに望む!!

▲今回はかなりレビューが長いですが、内容が面白いので詳しく書いてみました(憶測入る)。
さて、本作は黄正利が最後の敵である事や、出だしで蒋金が徐忠信に無茶な修業を強いられたりする場面で大概の人は「無難だけどまたコメディカンフーかな…?」と思うだろう。しかし班潤生と徐忠信が互いを認め合ってからはその出だしがフェイクであったことが解る。
お宝を巡る確執と陰謀…これとほとんど同じテーマを扱った『識英雄重英雄』という作品を紹介した事がある。両方とも少し展開が似通っているのが興味深いが、かたやコメディーカンフーの傑作で、かたやサスペンス風のシリアス功夫片だ。これはいつも革新的なことをしていた呉思遠らしい作風じゃないか!流石は"香港のスピルバーグ"である。
本作は確かに功夫片という枠組みにはハマっている。しかしその枠組みの中で新たな物を模索し、こうして作り出された呉思遠の手腕はもっと評価されてもいいはずである。これ以外にも呉思遠には初期の『餓虎狂龍』『猛虎下山』、黄正利と組んで作った『鷹爪鐵布杉』『龍形摩橋』など傑作は数多い。一般の香港映画ファンからはただ単に"『酔拳』の監督"としてしか認知されていない感のある呉思遠だが、"香港のスピルバーグ"の名はそれだけのものではないのである。
また物語以外にも、ラストには珍しい徐忠信VS黄正利というプロフェッショナル同士の激闘もあり、功夫アクションについても絶品だ。上記に挙げた作品群共々あまり知られてはいない作品だが、『酔拳』などにもヒケをとらぬ傑作であった…。