『雙辣』(1) | 続・功夫電影専科

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香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


雙辣
Two Fists Against the Law
1980

▼またまたまたインターミッション…というか、最近面白い作品に出会ったので紹介したいと思います。なかなかストーリーも興味深かく、かなりの長文になってしまったので当ブログ初の1作品を2回に分けて紹介する形式になりました。
さて、"香港のスピルバーグ"と呼ばれる人物は香港映画界で3人いる。
1人はサモハンで、もう1人は徐克(ツイ・ハーク)である。私が『ワンチャイ』シリーズにハマっていた時によく徐克が"香港のスピルバーグ"と呼称されていたので、個人的に"香港のスピルバーグ"は徐克のことという印象が大きい。しかしその2人に先だって、"香港のスピルバーグ"と呼ばれた男がいた。それが今回紹介する作品を思遠公司(シーゾナルプロ)で製作した呉思遠(ウン・シーユエン)だ。
呉思遠が香港映画にもたらした影響は計り知れない。『吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー』でジミー先生の初監督作を手伝った時から始まって、功夫映画の傑作と呼ばれる『南拳北腿』で一世を風靡し、『蛇拳』『酔拳』でジャッキーをスターにのし上げてコメディカンフーブームを巻き起こした。それだけにとどまらず、彼は海外マーケットを視野に入れた擬似白人功夫映画の製作に至る訳だが、ここであのジャン=クロード・ヴァン・ダムやビリー・ブランクスらが現れる。そして現在に於いても香港映画界での影響力は凄まじいという。
確かにサモハンや徐克らは大きな功績を残している。しかしその影響力たるや、やはり呉思遠が一歩リードといったところだろう。"香港のスピルバーグ"の二つ名は伊達ではないのだ。
そんな彼が1980年に本作を制作した頃、時代は大きな転換期を迎えようとしていた。そろそろコメディカンフーも食傷されつつあり、ジャッキーは功夫映画の新たな方向性を打ち出した『ヤング・マスター/師弟出馬』を送り出した。シネマシティが『悪漢探偵』で現代劇の路線を決定付けるのがこの2年後で、ショウブラが映画制作から撤退したのが更にその2年後だった。そんな動乱の時期に"香港のスピルバーグ"こと呉思遠は何をしていたのか?その答えが本作なのである。

■タイトルが示すとおり、本作の主役は2人の男たちだ。1人は班潤生(バン・ユンサン)という、あまり馴染みの無い役者だ。功夫の腕は中々だが借金がかなりあるらしく、登場してからいきなり特別出演の鐘發(チュン・ファット)ら借金取りの一団と大立ち回りを演じている。ちなみにデブゴン系以外の功夫映画に出る鐘發の姿はかなり新鮮だ。
そしてもう1人の主役が徐忠信(アラン・ツイ)である。彼もまた功夫の達人だが、インチキを使って門下生を持ち、テキトーな特訓を課して金をせしめるという詐欺師だった。さっそく冒頭から蒋金(ジャン・ジン)が騙されているのがおかしいというか悲惨というか(笑
たまたま出会った2人は、お互い汚れた人間だが拳と拳で相手を信頼する。その後は一旦別れた2人だが、なぜかいきなり班潤生が警察に捕まった事から、徐忠信が動き出した。
班潤生を捕まえたのは、警察の黄錦[火火火]木(メルビン・ウォン…以下表記がややっこしいのでメルビンで統一します。っていうかまた警察の役なのか(笑))とその部下の赤鼻&出っ歯だった。彼らは物語が始まったとき、仲間から預かった大量の金塊をニセ石天(『酔拳』の石天みたいにホクロに毛を生やした男…ちなみにその位置は頬ではなく鼻の頭)たちに奪われてしまっていたのだ。ニセ石天たちは表向きは普通の両替商なのだが、裏では色々とあくどい事を重ねている連中らしい。多勢に無勢の状況だったので仕方なく御用金をニセ石天たちに渡してしまったメルビンたち…しかしその時メルビンが「大丈夫だ、策はある」と意味深な事を口にしていたが…?
で、班潤生は逮捕ができないニセ石天一味に変わって金塊強奪の犯人として逮捕される(?)という。そこで助けに来て天井裏に潜んでいた徐忠信が話を聞き、脱獄させた班潤生と共に「ひと仕事やらないか?」と持ち掛けた…もちろん狙いは警察も諦めかけている金塊だ!
まず班潤生がニセ石天の経営する両替屋の前で新しい両替屋をオープンさせるところから始まった。やけに気前の良い両替屋にやっかみからまんまとやって来たニセ石天一味。そこで班潤生が乱闘を起こし、徐忠信が助けに入った。つまり、恩を売って御用金はどこなのか聞き出そうという作戦だ。ボコボコにされたニセ石天は徐忠信と家に帰って来た。そこにはニセ石天の親父で悪の親玉である黄正利(ウォン・チェン・リー)の姿があった…。

(紹介は(2)に続きます)