
闖王李自成
The Snake, The Tiger, The Crane
Emperor of Shaolin Kung Fu
1981
▲本作は"長平公主"の逸話をベースにした史劇である。
"長平公主"とは明朝最後の皇帝"崇禎帝"の娘で、反乱軍が本拠へ攻め入る寸前に"崇禎帝"の剣によって片腕を落とされ死んだと伝えられている人物だ。しかしこの"長平公主"には生存説があり、この逸話を使っていくつか映画も作られ、武侠小説にもその足跡を残している。一方、タイトルになっている"李自成"とは明朝を打倒した反乱軍の首領で、本作では大悪役として猛威を振るっている("闖王"は二つ名のようなもの)。
■ストーリーは燕南希(ナンシー・イェン)演じる"長平公主"が、黄家達(カーター・ワン)の協力を仰いで"李自成"こと王侠を倒すまでを描いている。王侠の軍の魔手から生き延びた燕南希は、打倒・王侠のために兵の目を避けつつ都にいた。そこで忠義の剣士・羅烈(ロー・リェ…今回の彼はカッコいい!)と出会い、敵のふところへと飛び込む!しかし"李自成"は強く、羅烈は燕南希を逃がして死んでしまう。
傷付いた燕南希は、学者の石天(ディーン・セキ)のところに匿われた。変な執事が怪しいが、石天は「姫君、私も李自成との闘いにお力添えいたします!」と誓ってくれた。さっそく敵陣に再び忍びこんだ燕南希と石天…だが、実は石天は王侠の部下だったのだ!しかもしかも、あの怪しかった石天の執事の方が実は味方で、非道な罠から彼女を助けるべく、彼もまた討ち死にするのだった。
続いて、燕南希は父が王侠の軍の将軍である女剣士と合流。仲間たちも徐々に死に絶えていく中、女剣士は「私が姫の身代わりになります!」と言って自らの片腕を切り落とし、人相が確認できないように岩に顔を打ち付けて死んだ。女剣士が身代わりとなった死体を見て、父である将軍はすぐにそれが自分の娘だということを悟ったが、娘の忠義の心に打たれて、その死体を燕南希のものだとして王侠の元へと引き上げていった。
ついに明の皇族を根絶やしにしたとあって大喜びの王侠。燕南希は復讐のチャンスを狙い、知的障害者のフリをして都に留まった。そんな彼女と出会ったのは黄家達だった。彼は病気の母(燕南希と面識がある尼さん)を介護しつつ町で豚肉屋を経営していて、とあるいざこざから燕南希を預かる事になった。
黄家達は燕南希を母に紹介したところ、「あたしが死ぬ前に結婚式が見たいのぉ…」と告げられた。あまり黄家達は乗り気ではなかったが、そのまま2人は晴れてゴールイン!…が、その直後に黄家達の母は自殺(!)し、そこに血文字でかかれた遺書が遺されていた(遺書の内容はよくわからなかったが、恐らくは燕南希が実は姫であり、せめて1人の女として幸せになってほしいから黄家達と結婚させた…みたいな事が書かれていたと思われる)。
一方その頃、王侠は兵を率いてどこかへ行こうとしていたが、そこを黄家達が明の残党たちと襲撃する!王侠は剣術が強いうえに爆弾を武器とし、黄家達を翻弄するが、今度は知的障害者の扮装から元に戻った燕南希も加勢に現れた。更に女剣士の父だった将軍も寝返ったが、それでも王侠は強い!
そこで黄家達と燕南希は協力して王侠のチョコボール爆弾を投げ返して誘爆させ、死に際の将軍の一刀でついに討ち取るのだった。だが、最後に黄家達も死んでしまい、その後の燕南希の消息は頑として知れない。その後、片腕の無い年老いた尼が、少年少女たちに武術を教えていたという…。
▼本作の監督は金翁という人で、『猴[馬付]馬』(後日紹介)などでも安定した(ヒネリのない)作風だったが、その『猴[馬付]馬』でも黄家達は主演という割にはあまり目立っていなかった。本作もテロップは黄家達が先だったのに、ひょっとして金翁さんは黄家達が嫌いなのか?
従って、実際の主演は燕南希だ。彼女は『ドラゴン太極拳』などで活躍している台湾の女優さんで、よく郭南宏(ジョセフ・クオ)作品に顔を出している。その燕南希さんは世にも珍しい女獨臂刀!というキャラクターで頑張っているが、いかんせん劇中では出番のわりに強そうには見えなかった。
本作の問題点として、一番活躍しなければならない燕南希が弱いせいでいつも誰かに守られていなければならず、確かにヒロインとしてはそれが正しい立ち位置かもしれないが、それでもあまりに仲間たちが倒れすぎな気もした。その他、ただの精肉屋だった黄家達がいきなり五獣拳を使ったりと、唐突な描写もいくつか目立っている。"李自成"の死も史実とは違っていたりするが、これはご愛嬌か。
ところで、本作で1番の注目どころといえば、やはり石天さんだろう。何しろ今回の石天さんは学者(だと思う)!しかもいつものイジワルで小悪党なキャラではなく、レビュー中にもあったとおりの実に誠実な人物として登場しているのだ!最初のあたりで燕南希を助けたりと、正体を明かすまでは「本当にコレ石天さんか!?」と思うぐらいのカッコいい役だ!最終的には燕南希を騙す悪者ではあったが、最後までカッコ悪いとこは1つも無し!
これは石天ファンは要チェックかも。