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From me

韓ドラ(ラブコメ)好き

想像考察、創作恋物語、花に寄せたポエム、猫との生活etc…
雑貨屋さんのようなブログです。
来てくださって、読んでくださってありがとうございます。

 バスの最後尾に座って、手を振りながら見送ってくれる二人を見ていたら、嬉しいような淋しいような複雑な気持ちになり涙が出そうになった


 「Luiji、ちょっといいか?先生と話していたんだが映画やらないか?」


 「映画?どんな?」


 「ラブストーリー。あの二人を見ていたら創作意欲が沸いてきて…二人がモデルの映画やらない?」


 「駄目だよ。色々あって幸せになったんだからそっとしておいてやって」


 「不思議な二人だと思わない?もちろんモデルだなんて分からない様にするから…その為にはLuijiさんから二人の事を聞かせてもらわなきゃならないけど」


 「僕が知ってるのは…たぶんほんの一部分。二人でいる時の事まではネ」


 兄貴の気持ちは僕にしか解からないし、僕の気持ちも僕にしか演じきれないので僕が二役をやるという事で話が進んでいった



 「じゃぁそういうことで宜しくお願いします」


 「ところでLuijiさん…

 “love dream”って知ってる?」


 「いいえ…それ何ですか?」


 僕はごまかした


<仁希の場合>
 少しまだ辛いような複雑な気持ちだけど、これを二人へのお祝のメッセージにしよう


 心からおめでとうと言えるように…





 療養がてらの旅行も終わり、以前の幸せな日々を過ごしていた


 変なことと言えば

 仁希がしょっちゅう


 「家に寄っていいか?


 と遊びに来ては

 俺達の事をじっと見ていることだろうか?


 人希との食事はダイニングのこともあるが


 “京都の床もどき”

 とテラスの時もあるし


 ゆかた祭りだからと浴衣を着て

 “屋台もどき”

 と驚かされることもあった



 仁希と一緒に帰る時は

 その事を伝えるのだけれど


 「今日は僕が一緒だと言わないで反対に驚かせようよ」


 と言うので


 「今から帰るよ」


 とだけ電話を入れ少しワクワクしながら家に着いた



 チャイムを鳴らしたが応答が無い


 鍵を開けて入った


 真っ暗だ


 (何かあったのか!?)


 急いで電気をつけた



 「おかえりー」


 飛び込んで来たえりかはセクシーなナイトドレス姿だった


 「キャー」という声と

 俺がえりかを隠すのと

 仁希が背を向けるのと

 同時だったような気がする



 えりかさんは急いでバスローブをはおり


 食事を並べながら


 「人希さんが一緒だってどうして言ってくれなかったの?何か疲れてるみたいな声だったから…ほんとにもう…」


 散々怒っていたが


 兄貴はというと…

 ニヤニヤが止まらない



 「えりかさん、僕が支度するから先に着替えてきたら?ここで兄貴が襲うかもしれないから」

 
 冷やかし半分に笑った



<仁希の場合>
 まいっちゃうなぁ
 いい歳してまったく


 ここに来るのはもちろん楽しいからだけど、役作りの為でもあったのに僕の知らない兄貴が次々に出てくる


 もうクランクアップだというのに僕は役作りに失敗しちゃったかなぁ?




 秋風が吹き始めた頃

 仁希が

 「今度の映画が完成したから見に来てくれない?」

 と言ってきた


 場所は、あの海辺のホテルがある街の小さなホールだった


 (何故そんな所で?)


 と思ったが、秋の夕焼けも見たくなって出かけて行った



つづきはこちら



画像お借りしました。ありがとうございます。

 その時、近くのテーブルに有名なお笑いのTさんが座った


 それに気付いたえりかさんはいきなり


 「だぁれだ?」


 Tさんに目隠しをした



 「こらえりか失礼だぞ!」


 さすがの兄貴も驚いて叱ったが

 


 Tさんはすかさず

 

 「僕の心を盗んだ涙の君」

 


 「覚えていてくれたの?」


 「覚えてるで。彼氏とはうまいこといってるか?」


 「紹介しますね」


 兄貴も僕もTさんとは初対面ではない



 「あれ?森村社長とLuijiさんやないですか。お久しぶり」


 「その節は彼女がお世話になったそうで…ありがとうございました」


 「え?あの時の涙の主は社長?社長あきませんで…夜中の電車で泣かせる様なことしたら…抱きしめよか思いましたで」



 えりかさんは、Tさんにも指輪を見せて嬉しそうに話をした


 「そうか…祝いせなあかんな…何が欲しい?何でも言うてみ」


 「うーん…じゃぁボ○ボ」


 「ボ○ボか…それはちょっときついな(笑)」


 「冗談ですよ。何も欲しい物はないです」


 「ええから言うてみ」


 「じゃぁ二つでも?」


 「ええよ。何?」


 「一つ目は、知り合いにとっても幸せなカップルがいると心の隅で覚えていてもらう権利。二つ目は、その事をネタにして喋らないと言う約束」


 「うーん…どっちも難しいなぁ(笑)」


 「じゃぁ何も要らない…」


 「わかった。解かった。約束する」




 打ち合わせがあるからとTさんは店を出ていき、すぐに真っ赤なバラの花束がえりかに届いた



 “婚約おめでとう Tより”


 カードが添えられていた



 えりかは花束を抱え

 店の前を歩いていくTさんに

 「Tさーん」

 と声をかけた


 Tさんは後ろ向きのままタバコを持った手を上げた



 えりかはTさんの後を追い、前に回って花束を差し出し


 「Tさん、カードだけで“おめでとう”はだめよ…ちゃんと口で言ってくれなきゃ淋しい…」


 Tさんは花束を受け取り


 「涙の君、婚約おめでとう」


 改めてえりかに花束を渡した


 「嬉しいTさん…ありがとう」


 花束を受け取りえりかは駆け出した


 「走ったらあかん!ゆるいけど坂道やで!」




 「シン!止めて!」


 聞き終わる前に俺は飛び出していた


 「シン!」


 そう言いながら、まるで映画のワンシーンの様にえりかが胸に飛び込んできた




 「不思議な人ね…社長が変わったのも解かるような気がするわ。あの歳で無防備で危なっかしくて、私でも守ってあげなきゃと思うかも…でも何故か母に守られてた子供の時のように落ち着くというか…きっと社長は心を守ってもらってるんでしょうね」


 二人を見ていたライターの先生までがそう言って笑っていた




 「まったく…俺がいなかったら又病院へ逆戻りじゃないか!気をつけてよ…本当にもう!」


 兄貴は怒っているのか喜んでいるのか…

 



 「僕もお祝あげなきゃね。何がいい?」


 「じゃぁ…心にサインを頂けますか?」


 「またそれなの?」


 「だって、Luijiさんにサインをもらう度に幸せになれるんだもの…二人の名前でお願いします」


 「じゃあ並んで。兄貴、えりかさん婚約おめでとう。Luiji」



 まだ撮影があるからと仁希達は移動して行った




 テラスで海を見ていた
 ゆっくりと時が流れる…
 美しくて穏やかな海だ



<えりかの場合>
 ずっとそばにいてね

 私は世界一幸せよ



<真珠の場合>
 ずっとそばにいるよ

 俺はこの世で一番幸せだ



つづきはこちら



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 数年前から常宿にしているホテルを予約した


 そう遠くない所にあるそのホテルは偶然見つけた


 海が一望でき四季折々の顔を見せてくれ、心身ともに休みたくなった時利用している家庭的で暖かい雰囲気のホテルだ


 ホテルのスタッフとも顔馴染みになっている


 その誰もが皆驚いた


 俺が女性連れで来たからだ



 えりかと知り合う前の生活で、女と旅行もしたと言ったがここにだけは連れて来なかった


 いつか愛する人と一緒に…そう思って来なかった訳ではないが、今思うと心のどこかでそう思っていたのかも知れない


 俺が行く時はいつも同じ部屋を用意してくれる


 この部屋は、ジャグジーからも海が一望できるお気に入りの部屋だ




 ジャグジーで海を見ながら

 そろそろ始まる夕焼けをえりかにも見せたかった




 「ねえ?何人の女(ひと)とここの海を見たの?」


 「誓って言う。ここに連れて来たのはえりかが初めてだ」


 「ふーん…じゃぁ他の所には行ったんだ…」


 「………」


 「きれい…」


 ここの海の夕焼けは格別だ



 「えりか…俺は、君がそばにいないと生きる気力も出ない弱い男だと思い知った」


 「私も自分がこんなに弱いと思わなかった…」



 ワインを開け指輪を取り出した



 「俺は、ずっとえりかのそばにいて世界一幸せにする。えりかもずっとそばにいて俺を世界で2番目に幸せにしてほしい」


 「私はずっとそばにいるわ…そして社長をこの世で一番幸せにしてあげる」



 「俺がえりかを守る」


 ルビーのリングをえりかの指にはめた


 「私が社長を守ってあげる」


 サファイアのリングをはめてくれた


 ルビーは俺の誕生石

 サファイアはえりかの誕生石


 この日の為に作り替えた




 「ところでえりか…いつまで社長と呼ぶつもり?」


 「だって……じゃぁなんて呼ばれたい?」


 「“シン”がいいな…」



 今夜の俺達は波の音が隠してくれそうだ……



 “シン”って呼んで欲しい訳?


 えりか…

 君は

 俺の腕の中で愛し合っている時

 “シン”

 俺の事をそう呼ぶんだよ




 夕日が恥ずかしそうにワインより真っ赤になって沈んでいった



 朝、ほんの悪戯心でカーテンに身を隠した…子供の頃よくやったかくれんぼ位の軽い気持ちで…


 目を覚まし、俺がいないと思ったえりかはそこらじゅうを探し回り、パニックになり動けなくなった


 あわてて飛び出し


 “こんな事はしないで!”

 と泣きじゃくるえりかを抱きしめ二度としないと誓った




 天気がいいので海の方へ下りてみることにした


 人だかりがしていた


 景色がいいのでよく撮影に使われたりしているが、誰か来ているようだ



 「あれ?仁希さんだ…撮影してるみたい」


 少し離れた所で見ていた俺達に気付いた仁希が


 「休憩だから食事でもどう?」


 と言ってきたので近くのレストランで食事する事にした


 しばらくして、ファンサービスを終えた仁希が監督やスタッフ達とやって来た



 「体調は?もう大丈夫なの?」


 「ああ。本当に世話になったな…ありがとう。お前も元気か?」


 「この通り。今日は?旅行?」


 「I 先生が、“療養がてらゆっくりしてこい”って退院させてくれたの」


 「えりかさん良かったね」


 「ありがとう…本当にお世話かけました…そうだ仁希さんこれ見て」


 自分と兄貴の左手を見せた


 リングが光っていた


 「真珠さんが作り替えてくれたの」



 (そうだ前は…誕生石だと言ってサファイアのリングをしていたし、兄貴はルビーが誕生石のはずだ)



 「あのね…仁希さんにも解かっちゃっただろうけど、私達二人とも弱いからそばにいないと駄目なのね…だから、真珠さんが私を守ってくれて私が真珠さんを守ってあげるって…それで私がルビー、真珠さんがサファイア」


 そう言いながら笑っているえりかさんを嬉しそうに兄貴が見ていた


<仁希の場合>
 かなわないと思った
 僕は今まで、愛した女の人を守ってあげたいと思ったことはあるが、女の人に守って欲しいと思ったことはない


 そんな弱さを見せたくないし認めたくない


 兄貴はそれを認め、そんな弱さもすべてえりかさんは愛しているんだな



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 病室のドアが開いた


 「えりかさん…今までどこに?」


 彼女も苦しんでいたのだろう…やつれてしまっていた


 ベッドのそばに座らせると


 兄貴の手を握り


 「どうしてこんな事に…ごめんなさい…お願いだから起きて」


 泣きながら何度も何度も繰り返した



 「仁希…来てくれてたのか…忙しいのに毎日すまない…えりかの夢を見ていたよ…“起きて”って泣いてるんだ…おかしいだろ?」 


 「兄貴夢じゃないさ…ほら」
 

 「えりか…?」


 「何やってるのよ…こんなになって…馬鹿なんだから…ごめんなさい…本当にごめんなさい」


 「人の事言えるのか?こんなにやつれて…ご飯食べてたのか?ちゃんと寝てないんだろ?俺こそごめん」


 「私もっとわがままになる…自分のことしか考えない」


 そう言ってkissをした


 「こら仁希の前だぞ…」


 「仁希さんの前だろうと構わない」


 そう言って、kissする二人から目をそらし出て行こうとした時


 「仁希助けて…」


 兄貴が叫んだ


 えりかさんを片手で支えていた


 彼女は気を失ってしまったみたい


 あわてて抱き上げソファーに寝かせた



 兄貴は

 

 “さっきまで生きる気力を無くしていた人か?”


 と思う位の勢いで駆けつけた看護士さんに


 「食べてないだろうし寝てないだろうし…えりかを助けて!」


 「とにかく検査して処置をしますから…貴方も早く治さないと」

 と怒られていた



 

 検査を終え、えりかさんが帰って来た


 「この前は君、次は真珠、今度は彼女。どうなっているんだ?まったく」


 I先生は、しばらく点滴で様子を見ること、眠ってないみたいだから軽い薬を使っている事、水分を充分に摂らせる事を告げ


 “病室は○号室に…”


 「駄目だここに置いて。目が覚めた時俺がいないと不安がるから…俺の横でいい」


 「あのなぁ…いくら個室とはいえここは病院。ホテルじゃないんだぞ。信じられないが、さっきまでお前も生きる気力もない病人だったんだから…彼女の看病は駄目だ」


 「俺はもう大丈夫だから…本当にそうしてくれ頼む」


 「しかたないなぁ………治療を有効に進める為に特別に許可するか…」



 「仁希頼めるか?」


 僕はえりかさんを抱き上げた


 「ぅん?誰…?」


 「僕だよお姫様」


 「Luijiさん…?」


 「はい姫の指定席」


 兄貴の横に寝かせた




 「抱きあげたのは俺じゃないって解かったの?」


 「もちろん…」


 「Luijiに抱かれた気分はどう?」


 「女優さんになったみたい…」


 「女優さんか…幸せだった?」


 「とっても…でもここの方がいい…」


 そう言うとすぐ軽い寝息が聞こえた



 「あらあら本当に安心できる指定席みたいね」


 看護士さん達に冷やかされたが、俺にとってもここは指定席だ



 水分を充分に摂らせるようにと言われたけれど飲まないので、俺は水を口に含みえりかに何度も飲ませた



 だが夕暮れ時、目を覚ましたえりかは何も覚えていなかった


 「やだ…そんな事…恥ずかしい…でも私の指定席は社長の腕の中。社長のそばでないと何も出来ない」


 そう言って笑った



<真珠の場合>
 もう何も迷わない
 えりかがいないと俺は生きる気力も出ない
 えりかも同じだと良く解かった
 もう何があっても離したりしない



 次の日から俺は、少しずつ食事も出来るようになり点滴も外れ、やがて退院し仕事にも復帰した


 えりかはまだしばらく入院しなくてはならないので、夜は病院に泊まる事にした
 

 部屋もハウスクリーニングを頼み綺麗にしたし後は退院を待つだけだ



 「そろそろいいか…退院しても。あまり遠くは無理だけど、療養を兼ねて旅行でもしてきたらどうだ?」 


 I先生が勧めてくれたのでそうする事にした



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<真珠の場合>
 その夜、目を覚ますと腕の中にいるはずのえりかがいなかった


 ベッドの脇に短い手紙があった



 “社長の為でも仁希さんの為でもありません。私のわがままです…

 許してください”


 指輪が残されていた


 何がどうなっているのか何をどうしたらいいのか…


 理解出来ない俺はうろたえ、ただウロウロと部屋中を歩き回っていた


 “そうだ!電話”


 つながらない…


 (なぜあの時えりかの気持に応えてやれなかった?仁希がどう思っていようと俺はえりかを愛している。それなのになぜ?)
 

 後悔と

 えりかがいない寂しさと

 えりかを失ったらという怖さと

 連絡が取れない苛立ちと

 

 俺は自分でも表現しようのない感情に捕らわれ、仕事も休み酒に溺れるようになり日に日に荒れていった




 スタッフから事情を聞き、心配した仁希が部屋を訪ねてきた時には、意識が無くすぐにI 先生のいる病院へ運ばれた




 「この前は君で今度は真珠か。どういう生活をしているんだ君達は?」 

 

 生きる気力のない兄貴は何度も点滴を外し、そんな状態が一週間も続いた頃


 「このままでは駄目だ。生きる気力を持たせないと…誰でもいいんだ励みになる人なら…そうだ、この前一緒にいた彼女はどうした?付き合ってるのか?連絡出来ないのか?まさか彼女が原因か?」


 僕はうなずいた


 「どうにかして連絡取れないか?」


 えりかさんの携帯はつながらない



 

<えりかの場合>
 どうしてここに来たのかあまり覚えていない


 ふらっと立ち寄った街に湯治場のような宿がありなんとなく泊っている


 これで良かったんだ


 仁希さんのファンだけど、それだけ…


 仁希さんの気持ちを聞いたからって心が動く訳ではないけれど、社長はきっと苦しむでしょう?弟みたいに可愛がっている仁希さんの事だもの…


 そんな社長を見るのは辛い…

 きっと社長なら大丈夫…

 強い人だもの…

 立ち直って幸せになってくれる…  

 

 そう信じよう



 私も大丈夫…


 そう思っていた…


 社長がそばにいてくれないと何も出来ないなんて思いもしなかった…

 

 ご飯も喉を通らない…

 眠れない…

 泣くことも出来ない…



 そんな私を湯治に来ているおばさん達が

 “これを食べろこれを飲め”

 と世話を焼いてくれた



 「無理にでも病院に連れて行こう…このままじゃ倒れちゃうよ」

 

 心配したおばさん達が話している時、スタッフのMさんからのメールに気づいた


 (社長が倒れました。これを見たらすぐにI病院へ来てください)

 

 倒れた?



 「その身体でどこへ行くの?」


 おばさん達が止めるのも聞かず電車に飛び乗った



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 「あの…そこ僕の席なんやけど…」

  

 言いかけてやめ、隣の席に座った



 僕はお笑い芸人のT


 結構トップクラスやと思う


 海外での仕事から帰ったばかりで、新幹線への乗り換えの為にこの電車に乗った



 その人は席を間違えていたが、窓に映る顔はどう見ても泣いてる


 「こんな夜中に電車で泣いてたら襲われまっせ。隣が僕で良かったでんな」


 関西弁にその人は顔を上げ


 「え?嘘?Tさん?」とあわてて涙を拭いた


 僕は人の話を聞き出すのは得意


 ましてや素人さんなんか朝飯前



 「何かありましたんか?」



 「今、彼を見送ってきたんだけど…今まで見送られるのは辛くて嫌だったけど、見送るのもこんなに辛いなんて…」


 携帯が鳴ってその人は席を立とうとした


 「彼でっか?ここでしなはれ。よろしいで」


 「ごめんなさい…」



 どうやら彼の方も、見送るのは嫌だったけど見送られるのも辛かったらしく空港から電話してきたらしい


 どう見ても若くないし何やってんだ?って感じなんやけど、なんとなく憎めなかった



 笑わせたり笑わせてもらったり…あっという間に着いてしまった



 「楽しい時間をありがとうございました。気を付けて…さよなら」


 「家に着くまで泣いたらあきませんで。僕みたいにええ男ばっかりと違いまっせ」


<Tの場合>
 不思議な人やったな


 精神的に自立した大人って感じやないし

 楚々としたおしとやかな京美人って感じでもない

 若い子みたいにキャピキャピした感じやないし

 かと言って普通のおばさんでもない


 けど何か落ち着くって感じやったなぁ…


 若い子とばっかり恋してるからやろか?




 出張から帰るとえりかが飛びついて迎えてくれ、それからの毎日は初めての経験ばかりだった


 部屋に明かりが点いている


 出迎えてくれる人がいる


 食事をするのもテレビを見るのも、眠るのも一人じゃない


 いつも側にえりかがいてくれる




 仁希を呼んで、三人で食事をしたり飲んだりもした


 「兄貴と二人で飲むよりもずっと楽しい」


 と喜んでくれていた



 そんな夢の様な毎日がゆっくり流れていたある日


 仁希のマネージャーから連絡が入った


 「休暇中のLuijiに急用が出来たんですが連絡が取れないんです。心当たりはないですか?」


 


 心配になり、えりかと部屋を訪ねるとちょうどマネージャーもやって来た


 部屋に入ると、部屋は荒れ放題で仁希が倒れていた


 「仁希!大丈夫か?」


 酒を飲み続けていたらしい事は、部屋の状態や泥酔状態で想像できた


 ベッドに寝かせ、友人の医師I に電話を入れ症状を伝えた


 「ちょうど帰るところだから行くよ」


 と言ってくれたので彼が来るのを待ち、処置をしてもらって二人は帰ってもらった
 


 仁希は、長い時間眠り続けていたが、薬が効いたのか目を覚まし水を欲しがった



 えりかが差し出した水をうまそうに飲み


 空いたコップを受け取ろうと出した手を引き寄せ


 仁希はえりかを抱きしめた




「こらこら仁希さん…誰と間違えてるの?」



 「誰とも間違えてなんかない…僕じゃ駄目?えりかさん…僕じゃ駄目なの?」



 えりかは仁希の腕を振り解き、俺の胸に飛び込んできた



 俺は今起きていることを理解できず、力いっぱい抱きしめる事が出来なかった




 次の日、目を覚ました仁希は夕べの事を覚えていなかった


 「なぜ二人がここにいるんだ?」


 「飲み過ぎて倒れてたんだ。ずっと眠ってて心配したよ…大丈夫か?」


 「そうよ…大丈夫?お粥作ったから少しでも食べて」

 

 「兄貴はずっと寝てたって言ったけど、本当?正直に言って」

 


 「酔っ払って大変だったのよ。“兄貴を頼むよ”って何度も絡むし…でも、“おめでとう”って言ってくれたわ。覚えてないの?ちょっとショック」


 仁希と俺のために笑いながら嘘をついた



まだつづきます
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 「ここは?」


 「俺の部屋。さあどうぞ」


 部屋はまだ充分に暖まっていなかったが、風呂は沸いていた

 冬の雨は身体の芯まで冷える


 温まって来るようにと彼女をバスルームへ案内し彼女はそれに従った



 その間にワインと少しつまみを用意した


 「じゃぁ俺も温まってくるよ…座ってて」



 彼女は窓の外を見ていた


 俺はカーテンを閉め


 「この部屋へ入った初めての女性に…」と


 ワインを勧め

 電話を一本入れた

 ホテルをキャンセルした


 今日も明日も彼女を帰すつもりなどなかったから…

 外はまだ雨が降っていた

 今夜の俺たちを隠してくれるかのような激しい雨だった




<真珠の場合>
 初めて会った時、君は俺の心の家にノックもせず何の挨拶もなく入ってきて、部屋という部屋トイレからクロゼットの引き出しの中まで覗いていった


 俺は呆気にとられながらも嫌じゃなかった
 むしろ、いつでも君が来てくれる様に門も扉も開けっ放しだった


 でも君は、心の家に入れてくれなかった
 それがどれだけもどかしく苦しかったか…

 でもそれも今は懐かしい気分だ


 腕の中にいる君を決して離さない

   「愛してる」


<えりかの場合>
 初めて会った時から解かっていたのかもしれない
 だから心の家には入れなかった
 社長の気持ちや自分の気持ちに気付くのが怖かったから…


 でも今ははっきりと言える

   「愛してる」


 なぜ、お見舞いに来て欲しくなかったのかって?

 病院のベッドで社長の顔を見たら、きっとその胸に飛び込んで泣いてしまうと解かっていたから…




 「もう“for you”は続けられない。"love dream"もやめる」

 "for you"は彼女の小さな本

 "love dream"は彼女のペンネー厶だ

 「どうして?」

 「"for you"は誰かに宛てたメッセージではないけれど、もし今私があれを読んだら、あの中の“あなた”はすべて社長になる。これから私が、言ったり書いたりする事はすべて社長に宛てたラブレターになってしまう…ラブレターはいっぱい書けると思うのよ…でも…ラブレターは人に見せるものじゃないでしょ?」
 
 「いいよ」


 俺はとても幸せな気持ちになった




 彼女が帰る日、彼女の誕生石サファイアと俺の誕生石ルビーの指輪を買った


 ちょうど出張があったので、彼女を送りがてら空港から発つことにし一緒に新幹線に乗った


 なんだか、二人で旅行に行くみたいなウキウキとした気分で、電車を乗り継ぎ空港に着いた

 「いってらっしゃい、気を付けてね」

 

 初めて彼女に見送られた



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 彼女の事を心配していた仁希も誘って食事に出かけた


 「えりかさん、もう大丈夫なの?」

 

 「ご覧のとおりもう大丈夫よ」


 「なにが大丈夫なんだよ…何度も何度も…」


 「まぁまぁ兄貴…えりかさんは元気そうだし…機嫌なおして」


 「別に怒ってないよ」


 「ほんとに心配かけて…ごめんなさい」


 「怒ってる訳じゃないから…」


 「えりかさん体力つけるためにも食べよう」


 「そうだよ食べて。後でちょっと寄るところがあるから…」


 「どこかに行くの?」


 「いいから食べて食べて」



 この後事務所に寄って、彼女にプレゼントを渡すつもりだった




 ずっと連絡を取り合って作った

 彼女へのプレゼント

 “小さな本”が出来上がってきていた


 「えっ…これって…わたしの?…本…信じられない…どうしよう…」


 「君の心の証を小さな本にしてプレゼントしたかったんだ」


 彼女は言葉をなくし涙を拭きながら


 「嬉しい…こんなに良くしてもらって…なんてお礼を言ったらいいのか…社長ありがとう」


 「僕こそ喜んでもらえて嬉しいよ」



 「記念の一冊目は社長に、二冊目は大ファンのLuijiさんに」


 「えりかさんよかったね、後で読むね」


 「一番が兄貴で僕は二番目か」

 と笑いながら

 「頑張れよ兄貴」

 と耳打ちして

 「僕はモテモテで忙しいので」

 と帰っていった




 「僕たちも帰ろうか?ブラインドを下ろしてくれる?」


 「解かったわ…あら…雨が降り出した…」



 ブラインドを下ろしていた彼女の手が止まり、窓ガラスに映る彼女を見ていた俺と目が合った


 俺達は、目をそらす事も近づく事も出来なかった



 我に返ったように彼女がブラインドを下ろした


 「帰りましょ」



 動き出した彼女を俺は抱き寄せた


 彼女は抵抗した

 「もう離さない。愛してる。初めて会った日からずっと」

 

 腕に力を込め心の内をすべてさらけ出した



 「駄目よ!」


 彼女は俺の腕をすり抜けようと抵抗しながら言った


 「彼は優しい人だった…お金の苦労もしたことがない…でもいつも彼の後ろに女性の影を見てきた。そんな彼を、少しずつ少しずつ空気のように消していき別れた。彼に未練も愛情もないけれど、もう人を愛するのは嫌。また長い年月をかけて消していく気力も体力もない…だから怖い…今度は愛した人を殺すかもしれない…だから嫌」


 俺はさらに強く抱きしめた

 「なぜ俺を消していかなきゃならない?ただ俺を愛してくれればいい」

 彼女の力が抜けるのを感じた

 「俺の方が怖くなった…こんなにも君を愛している事が怖いくらいだ」


 「知らないわよ…本当に殺すかもしれないわよ」


 「殺されたって構わない。でも君に決してそんな事はさせない。俺は君だけを愛する」



 「帰ろう」


 彼女の手を引き事務所を出た


 彼女は俺と同じ傷を持っていた



〈えりかの場合〉

 「人を愛する事に臆病になり怖かった…だから社長の気持ちにも自分の気持ちにも気付かない振りをしていた。いいえ気付いていたから怖かったのかもしれない…人を愛する幸せと怖さは背中合わせだから…」



つづきはこちら



小さな本 “for you”はこちら



《さざんか》





《たんぽぽの綿毛》

たんぽぽの綿毛に
 あなたが好きと
ひとつずつ
 結んで風に託しましょう
あなたの心に
 わたしが入れる隙間を
少しだけ
 わけてくださいませんか




《おおいぬのふぐり》

強い風が吹いています
 でも
ガラス越しの陽の光は
 日に日に
強さを増しています

冷たい風の中
 ふと
あなたがくれた微笑みは

わたしの心で
 雪時雨となりますか?

それとも
 春一番になるのでしょうか?




《ひいらぎ南天》

春の嵐の中で
 立ちすくんでいます
一歩を
 踏み出しそうで
震えるわたしです

その広い胸に
 飛び込んでしまいそうな
あなたの瞳の
 誘惑です……




《白木蓮》

春色の
 いい香りに
  包まれました
身体中
 ベールをまとったように
  いい香りが染み入ります
ふいに
 あなたに
  抱きしめられて
そのベールは
 一瞬にして
  あなたの匂いに変わり
わたしは
 しあわせの
  ベールをまといました




《ミモザ》

春の嵐の中で
 やっと
あなたに
  逢えました
 笑顔の
あなたに
  逢えました
風に髪を
 遊ばせながら
  勢いよく
あなたの胸に
 飛び込みます




《ネメシア》





《イベリス》

風の中に
たたずんでいると
 たまらなく
あなたに逢いたい
沈みゆく
夕陽を見ていると
 たまらなく
あなたに逢いたい
 あなたは今
 どこで
なにをしているのでしょう
 あなたも
 わたしに
 逢いたいと
想ってくれることが
 あるのでしょうか?




《ジャスミン》

あなたを愛して
 知ったこと

逢えない辛さ
どうしようもない嫉妬
心に住む人のいる喜び
肌の温もり

あなたを愛して
 知ったこと
愛する
 淋しさと幸せ

二つの心を
 わたしは知りました




《アンスリウム》

あなたのことを
 想うと
  微笑みがこぼれます
あなたのことを
 想いすぎると
  涙がこぼれます
微笑みと
涙の間を
いったりきたり……
 わたしは
  どうすればいいのでしょう




《ふゆしらず》

そよそよ
 そよそよ
  風になり
あなたの
 心の中にいて
そよそよ
 そよそよ
  少しずつ
あなたの
 心のもやもやを
そよそよ
 そよそよ
  追い出してあげたいのです




《ソメイヨシノ》

わたしは

いつもここにいます

あなたの

目が

耳が

傷ついた心が

わたしに

気づいてくれますように

癒やしてあげられますように





《くず》





《ぎぼうし》

悲しみに曇る
あなたの瞳に
ひとつぶの
水となって忍び込み
涙となって流れましょう

流れて
 流して
きらきらきらり
 あなたの瞳を
輝かせてあげたいのです




《つゆくさ》

窓のガラスに
「好」
 という字を書きました
心は暖かく
 ほっこりしました
「愛」
 という字を書きました
心はときめいて
 涙で揺らいで見せました

あなたを
 愛したあの日から
わたしは
 泣き虫になりました




《夾竹桃》

膝を抱えて
夕立の音に
震えています

そんな時
必ず鳴る着信音

あなたの声で
震えも
止まります

あなたの元へ
稲妻に乗って
飛んでゆきたい
わたしです




《むくげ》

草はらを
風が駆け抜けていきます
大空を
太陽が走っていきます
わたしの心に
住みついたあなたは
時の流れに
動じることなく
日ごと夜ごと
大きくなってゆきます




《灯り花》

あなたの胸に
背中をあずけ
 舞い降りた
  星達を
 見ていると
   涙が
あふれてきます
 ぎゅっと
抱きしめてください
あなたのこころに
 わたしを
とじこめてください





《芙蓉》





《くちなし》


車を降りると
 くちなしの
花の香りに包まれました
疲れた身体も心も
 癒されていくようです
夜風に乗せて
 あなたの元にも
  届けます

疲れて帰った
 あなたの
身体も心も
 ふわっと包んで
癒やしてあげられますように




《のうぜんかずら》

なつの
 気温のように
ぐんぐんと
 上昇する
  あつい想い
蝉時雨のように
 身体中に響く
どきどきする
  胸の鼓動
 みんな
 みんな
あなたの元へ
 飛んでゆけ!




《赤花夕化粧》

うふふ
あなたの
うふふふ
顔が見たい
うふふふふ
早く会いたい
嬉しいことも
わたしは
あなたの腕の中
抱きしめて
ふふふ
ふたり一緒に
ふふふふふ




《リビングストンデージー》

あなたの

こころの

まんなかに

わたしの

住み家があると

いいのにな

一生懸命

あなたの

こころに

元気を

いっぱい

送って

あげられるのに





《十日夜月》





《さぼてんの花》

出逢わない方が
 良かったのかもしれない
あなたを愛することが
 こんなにも切なく
苦しいものだなんて……

あの時
 あと1秒
  時がすれ違っていたら
あなたを
 愛し始めなければ
あなたの
 そんな涙
  見なくて済んだのに
 こんな涙
  流さずに済んだのに




《せいたかあわだち草》

色づいた木の葉も
 はらはらと散り始め
  風が冷たくなりました

 淋しい…
 とてもさびしい……

どうしようもない心を
 持て余しているわたしです

あなたに逢いたい
あなたの胸が恋しい

わがままなわたしを
 叱ってください




《こすもす》

秋風に
 はらはらと
  散っていった恋
このしずくは
 なみだ?
 秋の雨?

それをそっと
 ぬぐってくれた
あたたかい手

そんなあなたと
 めぐりあって
  幾度目の秋かしら?

あなたの胸の
 ゆりかごで
ほっこり ほっこり
 うつら うつら




《キャットテール》

恋しい
恋しい
恋しいと
心のなかで呟くと
よけいに
恋しくなりました
なので
恋しい
恋しい
恋しいと
声に出して呟くと
こんどは
逢いたくなりました
だから
赤とんぼの背中に乗って
あなたの耳元で
「愛しています」と
ささやきます




《野菊》

風が吹いています
もっと
 強く吹いてください

 そして

月を隠す雲を
 吹き飛ばしてください

明るい月の光の下で
 あなたの
  瞳の中にいる
 笑顔のわたしを見たいのです




《ひがんばな》

姿を見るだけで
 どきどきし
目が合うだけで
 真っ赤になりました
もう
 忘れてしまっていた
そんな
 少女の日のことを
あなたに出逢えた幸せを

肩にもたれて
 想っています
燃えるような
 やさしい
  秋の贈り物です





《オキザリス》





《秋桜》

秋風が
 少し冷たくなりました
風の中で
 秋桜が揺れています
あなたが
 恋しい恋しいと
  泣いているわたしが見えますか
  呼んでいる声が聞こえますか

風の中で
 秋色に染まる前に
  あなたの胸に帰ります

あなたの腕の中で
 わたしの心は
  桜色に染まってゆきます




《銀杏紅葉》


ひざの上に
 頭の重みを
  感じます
髪をなでると
 ぬくもりを
  感じます
おこたの誘惑に
 あなたは
  ぽかぽか
  うとうと
そんなあなたに
 わたしは
  ぽかぽか
  うふうふ
 しています




《梅》

バスに乗りました
 バス停の飾りが変わっていました
路に張り出した木の枝の
 つぼみが膨らんでいました
今日は曇り空なのに
 まるで
天使の階段のように
 光が降りています

心に住む人がいるということは
こんなにも
 ゆったりと
時が流れていくものなのでしょうか




《紅梅》

偶然
 あなたを見かけました
わたしは
 頬を染め
 耳まで熱くなりました
胸の鼓動を
 気づかれそうで
そっと押さえました
動けないまま
 あなたを
瞳だけが
 追いかけました




《こちょうらん》





《ミニ葉ボタン》





《クリスマスローズ》

小雨まじりの
 冷たい風が
ほほを蹴って
 駆け抜けてゆきます

あなたに
 届かなかった
  愛の言の葉が
片方なくした
 ピアスのように
わたしの
 こころの中で
  淋しく
揺れています




《ビオラ》

冷たい北風が
 ひゅうひゅう
  ないています

凍えた冬に
 めばえた
  小さな春

あなたに
 届けられない
よわむしの
  わたしに

冷たい北風が
  ひゅうひゅう
怒っています




《水仙》

こころが
 寒くて泣いています
部屋を
 あたためても
アッサムのミルクティでも
 だめなんです

 いっそ
  あなたへの
   愛の炎で
燃え尽きてしまえたなら……




《つばき》

わたしの
 この髪も
 この目も
 この耳も
 この唇も
あなたを恋しがっています

あなたの
 その手は
 その腕は
 その胸は
 その唇は
わたしを
 恋しがってはいないのですか?




《白沈丁花》

疲れて帰るあなたに
 花の香りを小瓶につめ
胸いっぱいの愛を添え
 夜の風に託します
あなたは
 気づいてくれるでしょうか
わたしの想いを
 抱きしめてくれるでしょうか

おやすみなさいのコールを
 しなくていい距離に
  なれたらいいのに…




《スノーフレーク》

あなたの
甘くやさしい
くちづけに
ほほも
こころも
ときめいて
胸の鼓動が高鳴ります

ほんの少し冷たい風の夜の
 ふたりだけの
  秘め事です





《ポリアン》

北風が頬を
ピキッと
突いて行きます
 痛くて
泣きそうです
 でも
心の中の
熱く燃えた灯りのおかげで
 まっすぐに
  走って行けます

もうすぐ
 もうすぐ
あの角を曲がれば
 あなたの瞳に
  わたしが映ります




《わすれな草》

なたが
つなんどき
べてが嫌になり
びーいろの涙を流し
いも疑い
にも信じられなくなっても
くさんの溢れる愛で
っこり笑顔にしてあげます


 
 ここまで長い時間読み進んでくださってありがとうございました
 

本編つづきはこちら

カラーの分は自分で撮った写真に文字を入れました。

モノクロの分は、画像お借りしました。ありがとうございます。

 色々な事があった年も終わり、新しい年は穏やかにと願っていた頃、仁希の誕生日パーティがあった


 スタッフのM君と出席していた


 「仁希おめでとう!」


 プレゼントを渡していると携帯がなった


 「何だ何だ、彼女からか?」


 冷やかしながら仁希は笑っていた


 彼女からだ…


 嫌な予感がした


 「ご飯食べてまーす」


 やけに明るい彼女の声がよけい不安だった
 
 「傷は痛みますか?事故…」


 切れた…


 かけ直したがつながらない



<真珠の場合>
 事故?何の事だ?
 事故に遭ったって事か?
 落ち着け
 大丈夫だ

 落ち着け
 俺は、携帯を握り締めたまま不安で胸が押しつぶされそうになった



 「あれ?えりかさんからだ…なぜ僕に電話を?もしもし…えりかさん?」


 「Mさん?社長も一緒でしょ?社長怒ってる?」


 「何か変ですけど…怒らせるような事したんですか?」


 「Mさんから伝えてほしいんですけど…」


 「いいですけど…いったい何ですか?え?事故?」


 「私からぶつかって行った訳じゃないのよ…当てられただけ」


 「ちょっと待って…そんな事僕から言えませんよ。自分で言ってください」


 「社長、えりかさんからですよ」



 「もしもし…」


 「もしもし…あのね…信号待ちしてたらね…ちょっと当てられちゃって…車は壊れたけどかすり傷で済んだし…心配ばかりかけてきたのに…ごめんなさい…でも本当に大丈夫だから…心配しないで」


 「本当に大丈夫なのか?」


 「大丈夫…だから心配しないで」


 横で聞いていた仁希が携帯を取り上げた

 「えりかさんそれはないだろ?“心配するな”なんてひどいよ。兄貴はこれまでだってどれだけ側で支えてやりたかったか…解かる?それなのに“心配もするな”なんて。兄貴が倒れてもえりかさんは心配しないの?するでしょ?心配くらいさせてやってよ。今だってすぐにでも飛んで行きたいんだよ。それを言わない兄貴にも腹が立つけど」

 「ごめんなさい…ちゃんと話すから代わってもらえる?」


「ごめんなさい。ずっと心配ばかりかけてきたから…肩のあたりを少し縫ったけど、よくこんな軽傷で済んだなってお医者さんもびっくりするくらい…後は擦り傷と打撲」


「ビデオにして」


「それは駄目…おいわさんみたいだから」


「おいわさんって…それじゃ大丈夫じゃないじゃないか」


「お医者さんは、腫れはすぐ治るって…抜糸が済んだら退院出来るって」


「そっちに行く」


「お願いだから来ないで…見られたくない…退院したら必ずそっちに行くから…本当に必ず行くから」



<仁希の場合>
 兄貴からえりかさんとの事はいつも聞かされていたし、えりかさんと話したこともあるけどやっぱりそれはひどいよ
 心配するくらいしか出来ないんだから…


<真珠の場合>
 冷静な仁希があんなに怒るなんて
 俺の代弁をしてくれてありがとう
 優柔不断な態度にも怒っているんだな
 でももう大丈夫
 今度彼女が来たら俺は告白するつもりだ
 断られてもあきらめない

 胸の内をすべてさらけ出す




 抜糸も済み退院した彼女から

 「次の連休に行く」と連絡が入った




 “本当に大丈夫なのか?”どきどきしながら駅まで迎えに行った

 彼女は、顔の腫れもすっかり良くなっていて


 「ご心配おかけしました…ごめんなさい」


 頭を下げておどけて見せた


 「本当に心配ばかりさせて…ほんとに…でも元気そうで良かった…」



つづきはこちら



画像お借りしました。ありがとうございます。