サン・ラ - アワーズ・アフター (Black Saint, 1990) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

サン・ラ - アワーズ・アフター (Black Saint, 1990)
サン・ラ Sun Ra ‎- アワーズ・アフター Hours After (Black Saint, 1990) :  

Recorded at Jingle Machine Studio, Milano (Italy), December 18 & 19, 1986
Released by Black Saint Records Black Saint 120 111(LP), 120 112(CD), 1990
(Side A)
A1. But Not for Me (George Gershwin, Ira Gershwin) - 5:58
A2. Hours After (Sun Ra, written in 1958) - 8:42
A3. Beautiful Love (Haven Gillespie, Victor Young) - 4:59
(Side B)
B1. Dance of the Extra Terrestrians (Sun Ra) - 13:21
B2. Love on a Far Away Planet (Sun Ra) - 10:05
[ Sun Ra Arkestra ]
Sun Ra - piano, synthesizer, vocal (on Beautiful Love)
Randall Murray - trumpet 
Tyrone Hill - trombone
Pat Patrick - alto saxophone, clarinet
Marshall Allen - alto saxophone, flute, oboe, piccolo
Danny Ray Thompson - alto saxophone, baritone saxophone, flute
John Gilmore - tenor saxophone, clarinet, timbales
Leroy Taylor (Eloe Omoe) - alto saxophone, alto clarinet, bass clarinet
James Jacson - basoon, Ancient Egyptian Infinity Drum
Ronald Wilson - tenor saxophone
Carl LeBlanc - electric guitar
Tyler Mitchell - bass
Thomas Hunter - drums
Earl "Buster" Smith - drums
(Original Black Saint "Hours After" LP Liner Cover & Side A/B Label)

 本作は同じブラック・セイント・レーベルからの前作『Reflections in Blue』と対になる、1986年秋のヨーロッパ・ツアー中にミラノで地元録音されたアルバムです。1990年という発売時期から本作『Hours After』1は1987年リリースの『Reflections in Blue』セッションの余りテイク集か、余りとは言わなくても『Reflections in Blue』を先行発売してから間を空けたリリースだったのがわかります。では内容で劣るかといえば決してそんなことはなく、サン・ラとしてはメインストリーム寄りのストレートなジャズ路線にアーケストラならではのひねりを利かせた好調な演奏が堪能できます。ただ『Reflections in Blue』と同時または直後の連続リリースだと作風があまりに重なる(同一セッションからの選曲だから当然ですが)ため、あえて間を空けたリリースになったのでしょう。2枚組にするという手もあったかもしれませんが、ライヴ盤ならともかくスタジオ録音の新作が2枚組なのはジャズではあまり例のないことで、LP単位にしろCD単位にしろ1枚もので分売リリースされるのがジャズでは普通です。そういうわけでやや割を食ったアルバムですが、ガーシュインの名曲「But Not for Me」を長く奇天烈なピアノのイントロから始めるこのアルバムはいかにもツアー真っ最中らしい、サービス精神にあふれた演奏が楽しめる好盤です。『Reflections In Blue』同様アーティスト写真のジャケットは工夫がありませんが、被写体が貫禄あふれる72歳のサン・ラですから、自主レーベルのサターン盤のジャケットとは呼べないようなジャケットよりはちゃんと商品になっています。

 また『Reflections In Blue』の余り曲なのが吉となってA面はメインストリーム・ジャズ(サン・ラのオリジナル曲A2もハード・バップ色の濃い1959年のアルバム『Jazz In Silhouette』初出の旧曲)、B面は2曲の新曲を収めたフリー・ジャズ・サイドながらスタジオ録音らしい凝集感があり、同じフリーでもスタジオ録音となると緩急の案配のついた楽曲性の高い演奏として安心して聴けます。4年ぶりのスタジオ録音による新作セッションだからかバンドの仕切り直しを感じさせる意欲と、適度な風通しの良さがあります。このブラック・セイントからの姉妹作『Reflections In Blue』と『Hours After』はライヴでの爆発力よりも快適なスウィング感が発揮されたアーケストラの演奏が聴け、レーベル側の要望に応えたアーケストラのサウンドに留意したのが吉と出たアルバムです。リラックスして聴けるメインストリーム・ジャズ寄りのサン・ラ・アーケストラもなかなか良いではありませんか。

(旧記事を手直しし、再掲載しました。)