残骸水濡れ本・その2 | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

 前回に続く。死んだ子の歳を数えるとはまさにこういうことですが、これからゴミに出す雨水濡れの本の束を見ていると魂の一部を抜き盗られたような気がします。おととい開梱した段ボール箱はひと箱まるごと黒カビだらけ、濡れて乾いて膨張したダメージ本だらけで、とても読める状態ではなく、もう泣くになけません。ジェリー・ホプキンズ(片岡義男訳)『エルビス』は、エルヴィス生前に刊行されたプレスリー伝の中でもっとも詳細で浩瀚な稀覯書でした。渋沢孝輔の『蒲原有明論』は先行する有明研究、矢野峰人『蒲原有明研究』、松村緑『蒲原有明論考』をさらに現代詩の視野から推し進めたもので、「現代詩手帖」誌1976年10月号「増頁特集・蒲原有明」とともに蒲原有明研究の基礎文献と言える名著です。生誕100周年を記念して刊行された『文藝別冊  セロニアス・モンク』はまだまだ不満の残る内容ですが、写真やディスコグラフィーだけでも価値があります。
 同じ段ボール箱に詰まった文庫本ではルキアノス『神々の対話』、A・A・ミルン『赤い館の秘密』がやられました。小説類も英米文学の古典、スティーヴン・クレインのアメリカ自然主義小説『マギー・街の女』『ジョージの母親』、裏切りと陰謀に満ちたジョセフ・コンラッドの傑作『密偵』、夭逝モダニズム作家トマス・ウルフ晩年近くの中篇小説の傑作『死よ、誇り高き兄弟』、ノーマン・メイラーの『裸者と死者』やジェームズ・ジョーンズの『地上より永遠に』と並ぶアメリカ戦後小説の夭逝作家ジョン・ホーン・バーンズのデビュー昨でイタリアの在駐アメリカ軍を描いたオムニバス長篇『画廊』、ジョーセフ・ヘラーの言わずと知れた‘60年代小説の金字塔『キャッチ22』、やはりアメリカ戦後作家ウィリアム・スタイロンのデビュー長篇『闇の中に横たわりて』とピュリッツァー賞受賞作の第3長篇『ナット・ターナーの告白』、全米図書賞受賞のジョン・バースのポスト・モダン小説『キマイラ』から、文学全集類の「中央公論社・世界の文学第二期」の『レイモン・クノー『地下鉄のザジ』『聖グラングラン祭』/サミュエル・ベケット『名づけられぬもの』』「講談社・世界文学全集」の『ジョルジュ・バタイユ『C.神父』/モーリス・ブランショ『死の宣告』/サミュエル・ベケット『マロウンは死ぬ』』の巻、ジュリアン・グリーン作品を収録した「主婦の友社・キリスト教文学の世界」の『アンドレ・ジッド『狭き門』/ジュリアン・グリーン『モイラ』『地を旅する者』』や「講談社・世界文学全集」の『フランソワ・モーリアック『愛の砂漠』/ジュリアン・グリーン『夜明け前の出発』』などなど、学生時代に片っ端から読んで何度も読み返したか、これからまた読み返したいと思っていた本がことごとく雨水濡れ・黒カビだらけで、もうゴミに出すしかありません。買い直すには数万円かかるでしょうし、これまで開梱した段ボール箱も1/3は水濡れダメージになっているとなれば、まだ開梱していない、これから開梱する約40箱の段ボール箱の蔵書も15箱ほどは諦めるしかないでしょう。一度でも読んだことがあるだけマシとしか言えません。自分を形作ってきてくれた本を泣く泣く処分するのは、学生時代の思い出まで失くしてしまうような気がします。ちなみに『蒲原有明論』とスティーヴン・クレイン『マギー・街の女』、『レイモン・クノー『地下鉄のザジ』『聖グラングラン祭』/サミュエル・ベケット『名づけられぬもの』』『ジョルジュ・バタイユ『C.神父』/モーリス・ブランショ『死の宣告』/サミュエル・ベケット『マロウンは死ぬ』』は買い直しました。『画廊』やジュリアン・グリーンは探すのに苦労しそうです。