裸のラリーズ - 法政大学「イマジナリー・ガレージ」'80年11月24日 (Live,1980) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

裸のラリーズwith山口冨士夫 - 法政大学「イマジナリー・ガレージ」1980年11月24日 (Live, 1980)
裸のラリーズwith山口冨士夫 - 法政大学「イマジナリー・ガレージ」1980年11月24日 (Live, 1980)

共演:突然段ボール、グンジョウガクレヨン、チャチャ82、ダダ、三文役者、ネオンほか。

Released from the 2 Box Set "1980 Live & Soundboard" Disc 7 by Illegal-Alien Records IAL01 (10CD-R, Unofficial), Germany, 2003
全作詞作曲・水谷孝
(Tracklist)
0. Introduction - 1:11
1. 夜より深く Deeper than the Night - 11:44
2. 氷の炎 Flames of Ice - 15:17
3. 夜、暗殺者の夜 The Night, Assassin's Night - 12:21
4. 黒い悲しみのロマンセ Otherwise Fallin' Love With - 11:15
5. 夜より深くPart 2 Deeper than the Night, Part 2 - 8:49
6. The Last One - 10:00
Total Time: 90:37
[ 裸のラリーズ Les Rallizes Dénudés ]
水谷孝 - vocal, guitar
山口冨士夫 - guitar
Doronco - bass guitar
野間幸道 - drums 

 このライヴは水谷孝(1948-2019)率いる裸のラリーズが、水谷と1970年以来の盟友だった元ダイナマイツ、村八分、リゾートのギタリスト山口冨士夫(1949-2013)をメンバーに迎えていた足かけ8か月、実質半年間・全7回のライヴから5回目のライヴになった、法政大学でのロック・イヴェント「イマジネイティヴ・ガレージ」に出演した際の音源です。裸のラリーズは1996年の活動停止まで日本最古の現役アンダーグラウンド・バンド、また一昨年2021年末に水谷孝の逝去が公表されて再活動が望めなくなるまで日本のロック史上最大の伝説的バンドでしたが、水谷孝・山口冨士夫と1980年にすでに伝説的ギタリストだった二人が共演した期間のラリーズはもっともジャーナリズムやリスナーから注目を集めた時期になりました。判明している山口冨士夫在籍時のライヴ活動とスタジオ録音を年表にしておきます。

・1980年8月14日、渋谷・屋根裏ライヴ(山口加入後の初ライヴ) *『Double Heads』収録
・1980年9月4~7日・9日、国立Mars Studioアルバム録音 *『Mars Studio 1980』収録
・1980年9月11日、渋谷・屋根裏ライヴ
・1980年10月29日、渋谷・屋根裏ライヴ *『Double Heads』収録
・1980年11月7~8日、神奈川大学「100時間劇場~人工庭園・錬音術師の宴」オールナイト・イヴェント(ほか12バンド以上)
・1980年11月23~24日、法政大学学生会館ホール「イマジネイティヴ・ガレージ」オールナイト・イヴェント(ほか8バンド以上)
・1980年12月13日、渋谷・屋根裏ライヴ
・1981年3月23日、渋谷・屋根裏ライヴ(山口在籍時の最終ライヴ) *『Double Heads』収録

 このうちバンド自身が発表を前提に録音を残していたと思われるものが未完成アルバム『Mars Studio 1980』と、3回分の渋谷屋根裏でのライヴを収めた最高音質のサウンドボード音源『Double Heads』ですが、山口在籍時のライヴ7回はすべて音源が残されていて、ドイツのIllegal-Alien Recordsから2003年に発売された『1980 Live & Soundboard』は山口冨士夫参加最後のライヴになった1981年3月23日の屋根裏ライヴ(『Double Heads』収録)を除く、1980年内に行われたライヴ6回分を収めたCD-R10枚組ボックス・セットです。Univive盤『Double Heads』2005がリリースされるよりも早く、また各回のライヴがラリーズ関係者からファンの間で流通していたため、山口冨士夫参加時のライヴ7回分はさまざまな形でUnofficial Album化されていますが、『Double Heads』収録の3回分以外のライヴは1ステージ完全収録でないもの、会場側がラフな状態で録音していたもの、観客録音のものが混在しており、まずはラリーズ=水谷孝自身が公式ライヴ・レコーディングを意図して最上の録音クオリティで収録したと思われる『Double Heads』が山口冨士夫在籍時のラリーズのライヴを代表する音源と見做していいものですが、『Double Heads』を聴いた上であれば、不完全収録や音質に難のある他4回分のライヴも十分聴きごたえがあり、ライヴごとの演奏の違いを楽しめるものです。それは前回ご紹介した、『Mars Studio 1980』録音直後の、解放感があり乗りの良い1980年9月11日屋根裏(不完全版)ライヴでお聴きいただける通りです。

 今回の法政大学学館ホールでのロック・イヴェントでのライヴは、山口冨士夫在籍時にはライヴハウスの渋谷屋根裏を主に出演場所としていた(ライヴ7回中5回)のラリーズが、若手のインディー/アンダーグラウンド・バンドに混じって現役最年長バンドたる存在感を示した、90分6曲と気合の入ったライヴです。イヴェント「イマジネイティヴ・ガレージ」は確認できるだけで8バンド、おそらく飛び入り参加を含め10バンドあまりが出演した1980年11月23日~24日のオールナイト・イヴェントで、ラリーズはトリ近く24日早朝に出演したようです。セットリスト6曲はこの時期のラリーズの代表曲ばかりで、「夜より深く」と「夜より深く Part 2」は歌詞が重複するもそれぞれ長調、短調とまるで違う曲です。6曲目の「The Last One」はおおむね25分~30分前後かけて演奏されるラリーズのライヴのラスト曲ですが、主催者側から会場使用時間制限のマキが入り10分ほどで切り上げられています。「The Last One」が普段通り30分前後におよんでいれば全6曲で120分あまりになっていたわけで、この日のラリーズの気合と意欲を感じさせます。録音状態はミキサー卓からのサウンドボード録音ではなくおそらく主催者によるバンドスタンド(ステージ上マイク)録音で、法政大学学館ホールは大学の階段教室ほどの中規模ホールですから、オーディエンスの反応は遠めですが、ホールに響き渡る残響がクリアとは言えない録音状態を相殺して余りある迫力と臨場感を感じさせます。『Double Heads』は会場のエア残響とオーディエンス反応をほぼカットしたサウンドボード音源で、椅子・テーブルで50人程度の小学校の小教室ほどのライヴ・ハウスでの残響のないデッドな録音状態がスタジオ録音以上のハイ・クオリティなのですが、オーディオ的にはローファイ極まりないこの大学ホールの木霊のような残響が響き、音割れする音響は実際のラリーズのライヴ体験に近いもので(これをさらに鼓膜が割れるのではないかと恐怖を感じる寸前まで大音量で聴いた状態を想像してください)、『Double Heads』のハイファイなラリーズ、この法政大学音源のラリーズをどちらも聴きあわせていただければ、なおいっそう裸のラリーズのライヴ体験に近づけます。ぜひお試しいただきたい次第です。

(旧記事を手直しし、再掲載しました。)