ツトム・ヤマシタズ・ゴー - ゴー・ライヴ (Island, 1976) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

ツトム・ヤマシタズ・ゴー - ゴー・ライヴ (Island, 1976)

ツトム・ヤマシタズ・ゴー Stomu Yamashta's GO - ゴー・ライヴ GO Live from Paris (Island, 1976) :  

Released by Island Records ISLD 10, 1976, as 2LP
All songs composed by Stomu Yamashta with lyrics by Michael Quartermain, except "Winner Loser" - lyrics by Steve Winwood.
(Side 1)
A1. Space Song - 2:30
A2. Carnival - 1:12
A3. Wind Spin - 9:30
A4. Ghost Machine - 3:45
(Side 2)
B1. Surf Spin - 2:20
B2. Time is Here - 9:20
B3. Winner Loser - 5:10
(Side 3)
C1. Solitude - 2:00
C2. Nature - 4:25
C3. Air Voice - 1:19
C4. Crossing The Line - 7:50
(Side 4)
D1. Man of Leo - 15:30
D2. Stellar - 1:25
D3. Space Requiem - 3:25
Stomu Yamashta's GO ]
Stomu Yamashta - percussion and keyboards
Steve Winwood - vocals and piano
Michael Shrieve - drums
Klaus Schulze - synthesizers
Al Di Meola - lead guitar
Jerome Rimson - bass
Brother James - congas
Pat Thrall - guitar (solo on "Crossing The Line")
Karen Friedmann - (part of) vocal choir 

(Original Island "GO Live from Paris" 2LP Liner Cover, Gatefold Cover & Side 1 Label)


 アルバム『GO』の録音が'76年2月、このライヴ・アルバムの録音が同年6月で、ツトム・ヤマシタ(山下勉、Stomu Yamash'ta表記も)の「GO」プロジェクトは当初からスタジオ盤『GO』と本作『GO Live from Paris』をまとめて計画していたようです。『GO』はツトム・ヤマシタ/スティーヴ・ウィンウッド/マイケル・シュリーヴの連名名義でしたが、本作ではバンドとしては「Stomu Yamashta's GO」、LPレーベルでは「Yamashta/Winwood/Schulze/Shrieve/Di Meola」の連名名義で、スタジオ盤ではロスコー・ジー(元トラフィック~カン)が弾いていたベースはジェローム・リムソンに代わっています。翌1977年にウィンウッドはソロ・アーティストとしてデビューしますので、プロジェクト最終作『GO Too』'77ではジェス・ローデンをヴォーカルに迎え、シュルツェ、シュリーヴ、ディ・メオラの3人はプロジェクトの最初から最後までヤマシタにつきあったメンバーになります。ライヴ・アルバムがパリ公演からの収録になった理由はわかりませんが、プロジェクトの性格からして国際性のアピールが念頭にあったのは間違いなく、アトランタやバーミンガム、ケルンや京都などではメンバーの誰かしらの郷里に寄りすぎるでしょう。その点パリでは良い具合に国際性をアピールできる場所でもあり、またすでにクラウス・シュルツェの人気の高い国でもありました。「GO」プロジェクトの音楽性は簡単に言えばスペース・ジャズ・ロックですが、フランスのロックにはゴング、マグマ、カトリーヌ・リベロ+アルプのようなヒッピー系の大物スペース・ジャズ・ロックのバンドがおり、「GO」の音楽性はフランスのリスナーに受けるタイプのものだったのもあります。

 また、スペース・ロックと言ってもクラウス・シュルツェの関わってきた西ドイツの電子音楽系クラウトロックのスペース・ロックはもっとアシッド臭いものでしたが、「GO」はメンバーの出自もあって、もっとジャズやソウル、現代音楽的であり、さらに東洋風エスニック風味もあります。そこがシュルツェの音楽の主流路線とは違う点でもあれば(ソロ第3作『ブラックダンス』では独自に試みましたが)、シュルツェが多くを摂取できる場でもあったと思われます。またパリは、シュルツェがアシュ・ラ・テンペルに参加した最後の年の1973年2月(コズミック・ジョーカーズ・セッション直後です)の公演でバンドの合間に50分のソロ・コーナーで演奏し、大喝采を浴びてソロ活動への自信をつけた場所でもあります。さらに1975年のシュルツェのアルバム『タイムウィンド』はフランスでヒット作になっており、この'76年6月の「GO」プロジェクト公演直前に"シャルル・クロス"ディスク大賞を受賞したばかりでした。スタジオ盤『GO』では連名名義に含まれなかったシュルツェの名が今回は5人連名のうちヤマシタ、ウィンウッドに続いて3番目に上がったのも、フランスでのシュルツェの人気を反映したものと思われます。しかしスティーヴ・ウィンウッド(シュルツェより1歳年下の1948年生まれですが、15歳の1964年にはスペンサー・デイヴィス・グループでデビューした天才少年でした)とクラウス・シュルツェの共演というのも、こういうプロジェクト企画ならばこそで、今となると想像を絶するものがあります。

(旧記事を手直しし、再掲載しました。)