久し振りのコンサート | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 上野の文化会館に来たのは3年振りくらだろう。以前は年に2・3回は来ていたのだが。東京では古い音楽ホールの改修工事があちらこちらで行われた。ここの小ホールも改修工事で休館になっていた。


上野

 義理の姉が朝日新聞でやっている音楽会の無料入場券に応募してサービス券を入手。一人千円に割引されるピアノトリオのコンサートである。プロの演奏家のコンサートは久し振り。


文化会館

 ポーランドのワルシャワ・フィルのヴァイオリンのトップとチェロのトップに日本人の女性ピアニストを加えたピアノトリオであった。プログラムは誰にでも馴染みのある3曲だ。


プログラム

演奏家


 演奏が始まった。改修したとはいえ、どこを改修したのか音は全然良くなっていない。最初はモーツアルトのk548のハ長調の曲だ。アンサンブルがひどい。今日は冗談が冴えている一緒に行った妻が「空港からきて、すぐ演奏しているのよ」だって。この曲は20年以上も前に私がヴァイオリンを再開して間もなく、大学時代の友人でプロのチェンバリストになった女性を家に招いて、弾いたことがあった懐かし曲だ。今日の演奏は最後まで3人の息は合わずにアンサンブルが整はなかった。


曲目

 2曲目はベートーベンの作品11のクラリネットでも演奏される「街の歌」という曲。アンサンブルが少しは良くなった。すると妻が「曲の合間にコーヒを一杯のできたんだよ」って冗談を飛ばす。この曲にも想い出がある。10年以上前に同じチェンバロの彼女の家で弾き始めて、1楽章も終わらないうちに「もう痛くて弾けない!」って中断したのだ。左手の腱鞘炎を患っていた彼女が痛そうにしている。「街の歌」という副題はヨーゼフ・ヴァイグルの歌劇『船乗りの恋、あるいは海賊』から取ったらしい。とにかく楽しい曲である。


 最後はチャイコフスキーのトリオ「偉大なる芸術家の想い出に」と題名が付いています。偉大なる芸術家とはニコライ・ルビンシュタイン。こんなんでアンサンブルが大丈夫かなって思うのだが、さすがスラブ系のポーランド人、突然演奏は素晴らしくなった。心情的にも、リズムも、和音も、強弱も、音の出し方も、音の流れも、スラブ系は違う。チャイコフスキーの曲はロシアの演奏家やオーケストラが弾く方がピタリとくるのだ。


 会場を出ると昼間の猛暑が嘘のように収まり、過ごしやすくなっていた。まあ色々あったけど、入場料も安いし、楽しい昔の思い出を蘇らせてくれた音楽会だから良かったです。