夜になって、時刻よりも少し早めに出かけた。聖ペーター教会だから、大聖堂の前を右に曲って真っ直ぐ行けばいい。しかし、もうとっぷりと暗くなっており右も左も判らない状態だ。聖ペーター教会の付属の
シュティフトケラーというところで音楽会が催される。その中にあるバロックザールと呼ばれる天井が高くてかなり広いホールがある。テーブルが縦に何列も並び、蝋燭の燭台が何か所かに置いてある。「自由席」だから、好きなところに座ればよい。
私達は正面やや左手、ホールの真ん中あたりに席を取って、ノッコがテーブルの角に座った。向かい側には2人の中年男性が座っている。60才くらいのマッチョ・タイプの男と、なよなよとした30才くらいの男性である。我々の隣には、4人組みの40才代の男女グループがテーブルを挟んで、大声で話しあっている。その様子から判断してアメリカ人のグループらしい。
この4人は声が大きくて賑やかだ。それに反して、向いの男性は笑顔を絶やさないのだが至って静かで無口である。彼等は白ワインを取った。大きなフラスコを逆さまにしたようなガラスの器をウエイターが持って来た。周りの客が「ほうー」と、感心している。こちらは赤ワインをグラスで貰う。ワイン代は別料金で帰りに払うシステムだ。
「前の二人はただ者じゃないわよ。関係があやしい」
ノッコが小声で言う。それとなく気をつけていると、どうもホモのようだ。欧米では当たり前のことだから、まあ、余りー気にしないことだ。第一、普通の格好をしているのだし。前に座ったのに、無口で黙ってもいられないので、いろいろ話してみた。イギリスかと思ったら、オーストラリアから来たらしい。マッチョの年配の男性には孫がいて、とても可愛いと目を細める。
Viosan の「ミネソタの遠い日々」
1970年に私たち夫婦・子供連れでミネソタ大学へ留学した記録のホームページにもどうぞ