お店の事情 - 018 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 ゲトライデ通りに出ると雨が少し強くなってきたので傘を買うことにした。モーツアルト博物館の近くに傘屋(alois kirchiag)があり、洒落た傘がウインドーに並んでいる。


遠い夏に想いを-傘屋

遠い夏に想いを-傘  物腰の柔らかい中年の女性がいろいろな傘を親切に開いてみせてくれる。
「チェロを担ぐので、何か便利な傘はありませんか」
「それなら、これはどうでしょうか」
そう言って出してくれたのが、紐が付いて肩から下げられう様になった洒落た女物の傘だった。作りが頑丈な男物の折りたたみ傘と、この女ものの傘を買って店を出た。


 我々は、店員が親切だからとか、優しいからとかいう理由だけで買い物をしてしまう癖がある。優しそうな笑みを絶やさない女性だった。オーストリアの店がフランスやイタリアの店と違う点はこうゆうところで、こうゆう一見何でもないことに、フランス人やイタリア人は拒絶反応を顕わに示す。


 その昔、フランスで女性の洋服を探していて、気に入ったのがない。洋装店のマネキン人形に着せてあるものが素敵だからと、これを見せてくれと女店員に頼んだら、絶対買うのならマネキンから脱がせてやるといわれ、「サイズが合わなかったら買わないよ」て返事したら、店員は駄目だと頑張る。


 イタリアでもウィンドーに置いてある靴が気に入ったので、見せてくれと言ったら、絶対買うのなら取ってくると言われ、これもサイズが合うか合わないか判らないので店を後にした。店の事情があるかもしれないし、今は少しは変わったかも知れないが、基本的に店員の態度は同じだと思う。マネキンに着せてあるのは店の装飾用で、ウィンドーに置いてあるのは飾り物だっていう意味は判るけど、日本人には納得できない。ゲルマン系の人達はあたりまえのように応対するから、カルチャーショックが少なくて済む。


 今日は早めにホテルへ帰ることにする。今夜の音楽会どこへ行くかまだ決まっていない。と言っても、音楽会がめじろおしという訳ではないのだから、何処に行くかを決めてしまえばそれでいいのだ。


 ホテルに戻ると、フロントに宿屋の主人がいた。相談すると、「モーツアルト時代の衣装姿で演奏するディナー・コンサートがいいよ。いままで、奨めた人から『とてもよかった』という感想をもらたが、『面白くなかった』というのはないよ」。彼はしきりに奨める。それでは行ってみるか。ここは演奏会などとは思わないで、学芸会に毛の生えたものでも楽しむという気がなければだめだろう。


 Viosan の「ミネソタの遠い日々」
1970年に私たち夫婦・子供連れでミネソタ大学へ留学した記録のホームページにもどうぞ