係りの男が説明を始めた。
「判りました。ただし、実状はこうです」
理由が判れば簡単なことだが、理由が判らないとホテル側に騙されたと思っても仕方がないだろう。
外国を旅行していると、情報が的確に伝わらないことがよくある。この子達の場合もそうだ。日本を出発した後に、ミュンヘンで宿泊する予定の第2のホテル側に何らかの事情が起こり、宿泊不能を通知したらしいのだが、彼女達と連絡が取れない。旅行代理店を通じて前泊のホテルを探したらミュンヘンのゾリンだったので、ゾリンに宿泊の継続を依頼したという訳だ。この件につては、そのホテルからゾリン宛のファックスが残っていたので読まして貰った。そして、女の子達に一字一句訳してあげた。ファックスが英語で書いてあったので助かったが、ドイツ語だったらどうにもならなかったかも知れない。
「じゃあ、ホテルを移らなくとも、あと2日間このホテルに泊まってもいいのですね」
「係りの男は保証すると言っています。クーポンもこちらのホテルで取っていますし」
「返してくれない理由がわかって助かりました」
こんなことは、よくあることだ。我々もパリのホテルに到着して、チェック・インしょうとしたら、係りの女の子が空き部屋がないと言う。宿泊客の男がもう一日宿泊を延長すると言って、出て行かないのだと言う。別のホテルを紹介してくれて決着がついたが、英語も仏語も話せなければ、万事休すである。
困った時は、お互いさまだ。小雨模様のパウルヘイセ通りを、荷物をころころ引いて歩きだした。
ホテルを出て直ぐの通りの奥に大きな寺院が見える。聖パウロ教会だ。但し、20世紀の初めに完成し、第二次世界大戦でも破壊され、1960年には航空機が離陸して高度が足りず、この塔に激突して、50人以上の死者がでたと言う、不幸な寺院である。堂内は殆ど見るべきものがないというので、素通りして駅まで歩いた。
Viosan の「ミネソタの遠い日々」
1970年に私たち夫婦・子供連れでミネソタ大学へ留学した記録のホームページにもどうぞ