迷宮みたい - 011 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 ゲーテハウスを捜すが一向に見つからない。レーマー広場くらいは行けるだろう思うが、これも当てにならない。とにかくゲーテのおじさんの家に行かなくては。


 「行動を起こす前に地図を調べて、通り名くらいは確認しなければ」
喫茶店で地図を広げて、ノッコがもっともな事をおっしゃる。


 喫茶店を出て西の方向に行く。地図にはそう書いてあるからだ。フランクフルトは、この辺りから高層建築が乱立する地域になる。また、朝のゲーテの像まで戻ってきてしまった。


 それらしい通りに入ると、やっと『ゲーテ』という文字の入った看板が見つかった。どうも本屋の広告らしい。ドイツ語が読めないので、誰もいない店の中を覗くが、どう見ても本屋としか思えない。裏手に廻って、うろうろしていると黒い作業服というか制服というかを着た中年の男性がどこからとなく現れた。郵便配達夫かと思った。


 英語は通じない。遠い夏に想いを-ゲーテハウス

「聞いてみたら」とノッコに促すと、ノッコがドイツ語で訊いている。男はぐるぐる廻ってあっちだこっちだとと指差すが、我々が要領を得ない様子なので、「ついてきなさい」と言ってゲーテハウスが見えるところまで連れていってくれた。


 いまだ、迷った場所がどこなのか地図を見ても判らない。正に、不思議の国に連れて来られたアリスさん達というところだ。ここを一度去ったら、二度と戻れないだろうと思う。


 Viosan の「ミネソタの遠い日々」
1970年に私たち夫婦・子供連れでミネソタ大学へ留学した記録のホームページにもどうぞ