ロンドンでイギリス絵画を見るにはテイト美術館に行かなければだめだ。美術館に行くには、ヴィクトリア線でピムリコという駅で降りる。駅を出てテムズの方角へ歩くと、ケンブリジにあるフィツウイリアム美術館風の12本のイオニア式列柱が並ぶ建物がテムズ川岸に建っている。
ここにはチューダー朝から現代までの英国絵画が展示してある。私の関心はコンスタブル、ターナー、ブレイクなど、更にラファエル前派などがある。ウィリアム・ブレイクは18世紀に活躍した象徴主義的、神秘的な詩人で、銅版画や挿絵などを得意としていた。(右下:ブレイク)
ラファエル前派のバーン・ジョーンズ、ミレイ、ロセッティ、ハントなど。特にバーン・ジョーンズは後年ラファエル前派から離れてゆくが、私の大好きな画家である。彼等の絵を見るには本当はバーミンガムの美術館に行かなければ駄目だ。何故なら、バーン・ジョーンズのコレクションが最も多い。しかしテイトでも彼等の主要な作品は揃っている。みな素晴らしい。(上はミレイの「オフィーリア」)
ラファエル前派とは19世紀の中頃の余りにもアカデミズムに偏りすぎた美術界に対してロッセッティ、ミレイ、ハントが中心になって起こした象徴主義の絵画運動で、アカデミズムの頂点にたつルネッサンスのラファエロ以前に戻ろうという考えだった。(右は:ロセッティの「受胎告知」とジョーンズの「階段」)
部屋ごとにコンスタブル(ここをクリック
)の展示室、ブレイクの展示室、ラファエル前派の部屋などがある。特に、ターナーはギャラリーの右翼に広い特別室が設けられ、大作がゆったりと見られる。
彼の描く絵は大半が漠然と曖昧で朦朧としている。しかし、絵を描くにあたって、嵐の日に帆船の帆柱にユリシーズみたいに身体をロープでくくりつけ嵐の中に船出していった(「Snow Storm」ロンドン・ ナショナル・ギャラリー蔵)、という現実主義を貫いたターナー。(右上はターナーのエッチング「セーヌ」)
ターナーは若くしてアカデミーの正会員になり、コンスタブルと違って、イタリアなど海外にも旅行し、名作を残している。フランスの印象派の画家たちが1874年に展覧会を開催し、ここでモネの『日の出、印象』が出品されて酷評された。それよりも30年も前にターナーは印象派を先取りする絵画を描いていたとは驚きである。(右上:ターナーの「ヴェネツィア」)
コンスタブルとターナーがフランスの印象派の出発点に与えた影響は大きい。1870年に普仏戦争の混乱を避けるため、ロンドンに飛んだモネは、そこで、コンスタブルとターナーの風景絵画に出会い、研究の末に1874年の印象派展で結実し印象派が確立された。(右上:ターナーの「ヨット」)
ミネソタの遠い日々
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