トルコ料理店 - 034 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 さて、今日の夕食は何処で食べるか。ホテルをぶらりと出て、通りを見わたす。昨夜入ったティッチフィールド通りのイタリア料理店の一軒おいて隣に「エフェス」というトルコ料理店がある。


 旅行でヨーロッパに来ると、普通は欧風料理店にしか入らない。インド料理店やタイ料理店はおろか、日本料理店にも入ったことがない。日本に帰って日本料理を食べたほうが美味いに決まっているからだ。


 この界隈は料理店が国際的だ。中東風のトルコ・レストラン。イタリア・レストランが三軒。フランス料理店とイギリスのパブ。角には中東から来ているという、狭いが何でも置いている雑貨店。この他にも勿論あるのだが、目に留まっただけでもこれだけある。営業時間も夜の10時頃までは開いている。それに、ホテルの地下にはちゃんとしたレストランもある。


遠い夏に想いを-エフェス
 「エフェス」というトルコ料理店。エフェスとはエフェソスのことで、古代ギリシャ時代に栄えた町の名前。何となく名前に誘われて入ってしまった感が強い。店内は横に細長い。電飾が紫や緑や赤を使っているから、それらしい怪しい雰囲気はある。しかし、れっきとした料理店だから、装飾の趣味は余り上品ではないが、料理は大変に上手い。


 私たちはラム・チョップを頼んだが、今まで食べた中で、焼き具合といい、味といい、芳ばしいかおりといい、一番うまいラムだった。私は海外でレストランに入ると、日本では余り食べられない、兎だとか、蛙だとか、鳩だとかの料理をよく食べる。またラムを結構食べるのだが、後にも先にもここのが一番上手に料理されていた。東京でも何度もラム・チョップを食べた。イタリア・レストランで出すことが多いのだが、どうも焼き具合、味のつけかた、風味や舌触りなど、満足のできる料理がでてこない。日本では、羊のつく漢字が多いのに、羊の文化がないから、羊のある風景もないし、牧童としての羊飼いの歴史も無く、これを上手に料理する文化もない。それに、スーパーや肉屋にも置いていない。


 戦後、食肉不足を補うために、政府はオーストラリアから最下級の羊肉を輸入した。現地では食用に適さないとのことで捨てる肉だったらしい。当然、日本人は羊の肉は「臭くて」・「不味い」ものと思い込んだ。今でも羊の肉は臭い思っている日本人は殆どらしい。だから食肉としても、ろくな肉が手に入らない。せいぜい、「ジンギスカン料理」などに使う薄切りの羊肉しか手に入らない。羊の肉は栄養価も高くてカルニチンが豊富で美容と健康にもよい。だが、世界的にみて、日本人は大変に変わった人種なのである。

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