イタリア料理店 - 027 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 音楽会が終ったのは、9時頃だったろうか。夕食を取ってないことに気がついたが、何処で食べたらいいのか見当がつかない。そのままホテルに帰ることにした。


遠い夏に想いを-french  ホテルのレストランはデザインは新しいが、客が誰も居らず、何か料理は不味そうである。ホテルの前のランガム通りとティッチフィールド通りの交差点はレストランで賑わっている。別に高級レストランではないが、気楽に入って、1皿2皿と食べたいだけ食べられる気安い感じがいい。ホテルの並びの角には無国籍に近いフランス料理店。このフランス料理店には昼食に入ったが、何を食べたのか思い出せないくらい特徴がなかった。だだの安レストラン。


遠い夏に想いを-pub  その向いは英国のパブ。パブは落ちつくのだが、酒の弱い私には、チャールズみたいに気軽に入れない。しかし、この店は一度入ってみる価値がありそうである。




 その向いの南角には、大きな声で客の呼び込みをしている太った大将がいるイタリア料理「セルジョの店」。ここでも一度食べて見ようと思うが、いつも満席で、まだ入っていない。


遠い夏に想いを-italian  その隣のティッチフィールド通り沿いのイタリア料理店「モンテ・ベルラ」で夕食をとった。料理の味はロンドンでもこんなに美味しいイタリア家庭料理が食べられるのかというほどだ。



 この夜は遅く入ったので、夜の10時の閉店までいた。客もいなくなり、年配の主人が我々のテーブルに座って、いろいろ話してくれた。おやじさんは痩せ気味でイタリア人らしくなくすらりと長身である。彼の英語はイタリア語のアクセントが強い。
「出身はイタリアなの?」
「そうだよ、イタリアの中部からね」
「ロンドンは長いの?」
「そうだよ、故郷には時々帰るけどね」
料理は故郷の味をいまでも守っているらしい。

「25年前にも、私たちはロンドンに来たことがある。あの時はドーヴァー海峡を船でフランスへ渡ったのだが、船内はイタリア人とギリシャ人が大勢いたよ」

「そう、あの頃はイタリア南部から仕事を求めてやってきた人達が多かったからね」

「おやおや、長居してしまったよ。もう10時をとっくに廻って、閉店時間を過ぎたようだ。でも今夜の料理は飛び切り美味しかったよ」

そう言って、店を出た。


 そう言えば、72年にもロンドンを訪れているのだが、あの頃はイタリア人とギリシャ人がやたらと多かった記憶がある。


 とにかく、料理は美味しかった。ロンドンでイタリアの家庭料理を食べられるんだから最高。


 ミネソタの遠い日々 - New (「留学を終えて」を掲載) -
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