コンスタブル・カントリー - 019 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 ここから、更に北東に進む。クーラーがない車だから、窓を開けて風をうけて走る。今年は緑を失った乾燥した大地が広がる。しかし、木々の濃い緑が目にしみて心地よい。


遠い夏に想いを-constable  目的地はイースト・ベルゴット村、そしてフラットフォード。コンスタブルが生まれ育った土地。18~19世紀に英国が生んだ偉大な風景画家が2人いる。ターナーとコンスタブルだ。ターナーはそのスタイルで日本でも一般に親しまれているから、英国を代表する画家はと聞かれれば、日本人は即座にターナーと答えるだろう。


 コンスタブルはターナーのように派手さはないし、色彩も無骨で堅実なので、日本ではコンスタブルについては殆ど知られていない。ターナーはフランスやイタリアなど大陸を旅して異国の景色を描いて廻ったが、コンスタブルはイースト・ベルゴット村やデダムなどサフォークを中心に一生を送って、この辺の風景を描き続けた。ターナーは26歳でロイヤル・アカデミーの正会員になったが、同じ風景画家のコンスタブルがアカデミーの正会員になったのは53歳だった。大器晩成というか、ターナーのように派手さはないが、サフォークの風景や情景を真に表現している。晩年パリのサロンに出品、絶賛を博したという。コンスタブルの手法はパレットの上で絵具を混ぜるのではなく、キャンバスの上で絵具をおいていく方法をとった。印象派のさきがけとして、フランスの画家たちにも影響を与えたらしい。


遠い夏に想いを-cons.country  いま、サフォークのフラットフォードやデダムを人々は愛情を込めてコンスタブル・カントリーと呼ぶ。そして、遠くに丘陵や野原が広がり、曲がりくねった川が流れる、のどかな田園風景を目の前にすると、英国人は呟く。
「まあー、まるでコンスタブル・カントリーのようだわ」
典型的な英国風景をダイナミックに表現した画家なのだ。
 夏の午後をコンスタブルが描いた景色の中をゆったり散策するのは気持ちがいい。彼が描いた絵と実際の場所・方角などを示したパネルがある。これを覚えておいて参考にするとよい。


遠い夏に想いを-wain  「干し草車」(右の絵)などの記憶にある有名な絵もある。




 



遠い夏に想いを-haywain   これらの絵はこの地区のどこに行けば、その実際の景色が見られるかが判るようになっている。



 


遠い夏に想いを-flatfordmill

フラットフォード・ミル


遠い夏に想いを-flatford  180年ほど前のフラットフォードや、木造の建物や、周りの景色も当時のまま残っている(右の絵「フラットフォードの製粉所」)。フラットフォード・ミルはコンスタブルの家族が所有していた古い水車だ。ストゥア川が緩やかに流れる。水面には水鳥が静かに進み、遠くを見渡せば、牛や羊が草を食んでいるのどかな風景が続く。


遠い夏に想いを-mill house  車でないと来れないのだが、結構、人出が多いのに驚いた。コンスタブルが英国で如何に人気があるか解るような気がする。





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