朝のダーラム - 006 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 さて、何処へ行くか。90年の時と同じように、一日は私の行きたいところ。あと一日はチャールズの奨めるところ。今日は私の希望でイーリーと決まった。ここからならケンブリッジを抜けて真っ直ぐ北上すれば、40キロくらいだから、大した時間もかからないだろう。老犬と猫を残して、例のおんぼろのワーゲンに乗りこんだ。空は抜けるように青い。朝の柔らかい日差しがきらきらと美しい。


遠い夏に想いを-平野  クレアからB1063号線を通って北上する。チャールズによると、この辺は土地が悪く、客土をして農地を作ったらしいい。見渡す限り畑で何もない。風景も単調だ。



 イーリーに行くのに、ニューマーケットを通っていきたいと言ってあった。B1063号線を北上する途中、ダーラム(ダルハム)に寄って行こうとチャールズが言う。


遠い夏に想いを-ダーラム教会  ダーラムは150人ばかりの小さな村だが、ここにはセント・マリー教会がる。勿論、我々はダーラムという地名は知っていても、ダーラムに何があるか見当もつかなかった。この辺りは余り訪れる機会もないので、チャールズが気をきかしてダーラムの教会に誘ってくれたのだ。


 ダーラムの教会は小高い丘の上に立っている。教会の前方には広い平野が広がり、煙るような緑の景色が見える。この地はかってノリッチ一族がマナーを構えていたところで、古いサクソンの教会跡に今の教会が14世紀に建ったらしい。古い教会部分はドゥームズデイ・ブック(ウイリアム征服王の1087年の戸籍調べ)に、「教会は40エーカー(12万平米/5万坪)の土地を有し・・」と記載があるという。その40エーカーは現在もそのまま残っていて、教会から見渡すかぎりの煙るような平野がそれだ。

遠い夏に想いを-堂内  教会は大きくなくいが、堂内は大変明るい。窓には赤とブルーを基調として、黄色であしらわれたステンドグラスがはめられていて、単純だが明るくて美しい。ステンドグラスの中央はイエスが説教を、右側には聖母子像が、左側には3人の使徒が描かれている。教会の周りは墓地になっており、あちらこちらに墓石や十字架が斜めに傾いていて、古い時代を思わせる。





遠い夏に想いを-セント・マリー














 

遠い夏に想いを-マナーハウス  教会は15世紀から18世紀までこの地に住んでいたストゥートヴィユ家のものらしい。現在は、教会のうしろにマナーハウスがある。


 1303年にエドワード1世(獅子心王)が2番目の妃のマーガレット・オブ・フランスにこの館を与えたらしい。エドワード1世はウェールズと戦い、これをを併合し、息子をプリンス・オブ・ウェールズにした。スコットランドとの抗争を描いた映画「ライオンハート」でおなじみの王様で、王妃マーガレットが裏で工作する話など脚色が多い映画だが、史実に基づいている。皆さんもご存知だろう。


 20世紀に入って、セシル・ローズが館を手に入れたらしいのだが、現在は誰が住んでいるか判らない。


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