クレアの町へ - 004 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 話を戻そう。パブを出ると、とっぷり日が暮れ、見渡す限り地平線が闇に覆われていた。ここから北に車で20分以上走っただろうか、小さな町らしいところへ入って行き、町の中心地に車は止まった。


遠い夏に想いを-houses
 暗くて何も見えない。車を降りて、広場に面した長屋のような建物の中に入った(上写真:左側から3軒目の黄色い家)。犬が一匹、我々を迎えた。年老いたビーグル犬で、しっぽを振り振り食事をせびる。


遠い夏に想いを-beagle  チャールズはドッグフードをボウルに入れて食べさせる。何代目のビーグルだろう。30年近くビーグルだけを飼い続けている。すっかり歳をとって、太った体を動かすのもつらそうだ。
「もう、歳でね。あと何年生きられるか。彼が死んだら、もう犬は飼わないつもりだ」


 一人暮らしだから、またビーグルを飼うだろう。それに、彼は兎狩に関心があるらしいのだから。狐狩や兎狩に反対する社会運動がじわじわと押し寄せて来ている事に神経をとがらせている。


 台所に猫が一匹。チャコール色の毛の長いやつだ。犬は猫にお構いなしだが、猫はどうも犬が嫌いなようだ。


 イギリスのデタッチドハウスや長屋の家は、間口が狭く奥行きがある。1階は玄関と廊下、右手に2部屋、左手奥には台所と風呂・トイレ。裏にはバックヤードがあり、花壇になっている。右奥の部屋から2階に上がると、寝室が2部屋ある。イギリスの庶民家屋に見られる定番の間取りだ。我々が泊まった2階の寝室は広場に面していた。


 日本の玄関の扉は外側に開閉するが、イギリスでは反対だ。他の欧米諸国も同じだと思う。イギリスでは内側に開くが、日本では外側に開く。昔は殆ど引き戸であった。扉はお寺の門扉に使われているくらいで、不思議とこれは内側に開く。日本の家屋の玄関は狭いから、こうなったのかも知れない。それとも、鋸のように前方に押して切るか、手前に引いて切るかの違いのように感覚的なものか。しかし、日本でも積雪地方は内側に開く方が楽だと思う。冬の朝などに雪が降り積もって玄関が開かないことがあるからだ。


遠い夏に想いを-town center
 朝、目を覚まして、窓を開けると、どこの街にもある戦勝記念塔が広場の真ん中に見える。なんと、バスの停留場まであって、朝と晩にバスが1往復しているらしい。田舎もいいけれど、車がなければ、いたって不便だ。


 チャールズがいなければ、観光ルートから外れたこんな田舎町を訪れる機会もなかったと思う。

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