サンタポリナーレ・イン・クラッセ教会 - 068 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 午後3時頃、駅前からバスでサンタポリナーレ・イン・クラッセ教会に行った。この教会は聖アポリナリスの記念教会堂として549年に建設された。バスに乗り5キロくらい南に下がる。ローマ時代は、この辺はアドリア海に近いため、初代ローマ皇帝アウグストス(教会の庭には彼の銅像が立っている)によって東地中海艦隊の基地が置かれていた。いろいろな物資の荷揚げが盛んに行われて、賑わっていた町らしい。

遠い夏に想いを-s.apollinare classe 01  今は海岸線が後退し、何もない野原の真ん中にぽつんと教会が建っているだけだ。クラッセという名前は『Civitas Clasisi』というローマ時代の町からきているらしい。その後、ラヴェンナが衰退して、港も忘れられてしまった。ここの教会はサンタポリナーレ・ヌオーヴォのように40メーターほどの円形の塔(塔の建設は11世紀の頃らしい)をもったバシリカである。バシリカとは本来古代ローマの神殿を教会に利用したのが始まりである。



 堂内の左右の列柱は、サンタポリナーレ・ヌオーヴォより高く、その上に並ぶ窓の空間にもさしたるモザイクはないのだが、正面の祭壇の上部に描かれたキリストと子ひつじのモザイクは緑がなんとも美しい。半円形のモザイク画の中心に、大きな十字架が描かれ、半円形の頂点から人の手が下りてくる。これは神を暗示しており、十字架の下の聖アポリナーレを指し示しているのだ。十字架の左右に大予言者モーゼとエリヤがおり、その下にペテロとヨハネとヤコブが羊の姿で立っている。ただ、私にとっては聖書の暗示や比喩よりも、ただ美しいがどうかが価値基準となる。なにせ、5~6世紀といえば、日本では古墳時代なのだから。



遠い夏に想いを-s.apllinare classe 02  モザイク画の一番下には十二使徒が羊の姿で一列に並んでいる。更に、半円形の上部の外側には十二使徒が山を登る羊の姿で描かれ、その最上段には中央にキリストの半身像と左右に左から鷲の姿をした聖ヨハネ、天使の姿で聖マタイ、ライオンの姿で聖マルコ、そして牛の姿で聖ルカの4人の福音書著述家が描かれている。このフレスコ画は、素朴なアレゴリーを大変に分かり易く説明している。大変にやわらかい色調で、素晴らしいモザイク画だ。



遠い夏に想いを-s.apollinare classe 03  野原にポツンと建っている教会に訪れる人もない。帰りのバスには、来る時に同乗していた若いカップルだけだった。ラヴェンナの寺院は素晴らしいモザイク画で飾られている。古代ローマ崩壊から12世紀ルネッサンスが始まるまでの中世の空白を埋める文化遺産の宝庫である。


 街へ戻って、市内を歩き、夕食をとる。今日はノッコの反対を押しきって、昨日のリストランテの近くにある別の店に入った。結構、大きな店だが客は年寄りが一人夕食を取っていた。時間が経って、ぼつぼつと客が入ってきたが、この客層も昨夜のレストランに比べてよくない。おまけに残念ながら、味は昨日の店より各段に落ちる。コーヒーは無いと言う。こういう店が時々ある。夜の街を歩きながらホテルに帰る。広場のテラスには夜の憩いを求めて人々が集まっているが、今夜は昨夜よりずっと人出が少ない。不思議な街だ。昨夜はいったい何だったのか。不思議だ。

 ミネソタの遠い日々 - New (シカゴへの旅パート2を追加) -
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