イタリアのおばあさん - 049 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 暫くすると、坂の上から橋に向かっておばあさんが一人でやって来る。足取りはしっかりしているが、腰が少し曲がっている。
「やあ、日本の人かい」
「そうですよ」
「目が釣り上がっているから直ぐ分かるよ」。
この表現には苦笑する。
「うちの孫も目が少し釣りあがっていて可愛いよ」
そう言って指で目尻を押し上げた。
「そうですか」
「サン・アントニオに行くんだろう?」
「そうですけど」
「わしについてきな。わしん家は教会の前で店屋やってんだ」


遠い夏に想いを-san antonio01  私達はこのおばあさんの後についていった。橋を渡り細い小路を真直ぐ歩き、右に折れると坂の上に教会が見えてきた。
「毎年こんなに暑いんですか」
私たちは暑さにぐったりしている。
「夏は暑いもんだよ。今年は特に暑いみたいだがね」
当たり前のことを話しながらゆっくり坂道を歩いた。


 サン・アントニオ広場まで来ると、おばあさんは教会の真前のみやげ物店を指差した。
「ここだよ。教会の帰りにでも寄っていきな」
そう言うと店屋の中に消えていった。

 ミネソタの遠い日々 - New (シカゴへの旅を追加) -
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