サン・パンタロン教会って響きはいいけど - 029 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 今日はカナル・グランデの西側の地区に行ってみようと思う。サン・マルコ広場からバポレットに乗りカナル・グランデを進みサン・トマで下船する。


 最初の目的地はサン・パンタロン教会。ここはノッコがフランス語を教えている女の子が、地元の知り合いに連れていってもらって感激したので、是非見てきてくださいと言われた所だ。殆どの日本語の観光案内書に記述がない。地元の人が訪れるだけだ。ヴェネツィアには観光案内書に記載されていない所で素晴らしいところが沢山あるから、3日や4日では見切れない。とりあえず、サン・トマで下り、現地で買ったイタリア語の地図には小さく「サン・パンタロン」と印字されているのだが、一向にたどり着かない。


遠い夏に想いを-pantalon  ヴェネツィアは道一本、角を一つ間違えても、とんでもない方向へ行ってしまう。リオ・ディ・カナル・フォスカーリ運河に出るのだが、どうしても教会に着かない。狭い道を通り、運河沿いの家々の軒下やトンネルみたいな小道をくぐりぬけ、運河に架かる小さな橋を渡ってわけもなく歩いた。遂に、大きな広場に出た。近くに歩いているおばあさんに聞いたらサンタ・マルゲリータ広場といって、サン・パンタロン教会はこの広場の奥にあると言う。


 やっとたどり着いた。教会の堂内はわりと厳粛な雰囲気である。18世紀に内装された教会の内部は、システナにあるミケランジェロの『最後の審判』のヴェネツィア版みたいだ。ここの天井画はフミアーニという画家が17世紀末に描いた「聖パンタロンの殉教」がある。フレスコ画でなく大きなキャンバスに描いたそうだが、どうやって描いたのだろう。


 全体に暗い色調なのだが、黒と灰色と赤とベージュ色が主要色で、ごてごてとだまし絵風に描かれた天井画は見上げる者に、上から威圧的にのしかかかって来る。これはローマカトリックのヒラルキーを図にしたものに過ぎない。ローマカトリックを頂点とする階層社会の絶対性を知らしめるために有るようなものだ。余り趣味はよくない。ここはカトリックの教区内教会だから余り知られてないし、訪れる観光客も少ない。

 ミネソタの遠い日々 - New -
1970年に私たち夫婦・子供連れでミネソタ大学へ留学した記録のホームページにもどうぞ