サン・マルコ広場での競演 - 028 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 リストランテを出て、サン・マルコ広場に戻る。何処からともなく、音楽が聞こえてくる。カフェテラスの呼び込みで、広場にはフローリアン、ラヴェーナ、クアドリの3ケ所が店の前に小さなステージを作って、演奏者が競演している。


遠い夏に想いを-楽隊  72年に来たときは、キャサリン・ヘップバーンの『旅情』にあるように、夜のサン・マルコ広場の中央に吹奏楽隊が陣取り、ロッシーニを演奏していた。「セビリアの理髪師」とか「泥棒かささぎ」や「ウィリアム・テル」などの序曲がサン・マルコ広場に響きわたっていた。(上の写真は1972年の吹奏楽隊)


 ロッシーニの音楽は明るくて軽快だ。聴いているだけで心が弾むし、イタリアそのもの響きがする。「さあ、これからオペラが始まるぞ!」と心を掻き立てる音楽は抜群だ。ベートーヴェンが活躍していた頃、ロッシーニはウィーンの一般大衆に大うけで、人気はベートーヴェンをしのぐ勢いだったという。ロッシーニがウィーンにやってきた時に、ベートーヴェンがロッシーニに「オペラ以外の曲はかかないでくれ」と言ったという有名な逸話が残っている。ベートーヴェンよりも18歳年下だった彼の勢いがうかがわれる話だ。


遠い夏に想いを-アンサンブル  今日は、人数が足りなく本格的ではないが、長い髪を振り乱してヴァイオリンを弾く男がヴィヴァルディばりの名演を聞かせる。しかし、彼らの前のテーブルや椅子には、誰も座っていなし、聴いている者もいない。隣の店のアンサンブルは女性がヴァイオリンを奏でているが、腕はヴィヴァルディ君にかなわない。


遠い夏に想いを-夜のサンマルコ  ふいとサン・マルコ寺院の上の空を見ると、瑠璃色の濃いブルーの空が広がっている。こんな空は生まれて初めてだ。しばらく見ていると濃い瑠璃色の空は漆黒の闇に吸い込まれるように暗闇に変わって行った。まるで幻想的な夢を見ているように。

 ミネソタの遠い日々 - New -
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