音楽会があるよ - 026 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 先ずは、両替屋を探さなきゃ。サン・マルコ広場の西側へ戻り、急ごしらえのような両替屋に入る。ドルでなくて、リラをTCにしてきた。これを現金に変えてもらう。気の優しそうな中年のおばちゃんが切り盛りしている。手数料が7%。高いようだが、結局ここが一番安かった。

遠い夏に想いを-チラシ 「あれ、音楽会のポスターよ」
ノッコが叫んだ。

8月のヨーロッパは、音楽家もバカンスか海外に出稼ぎにいっている。ヴィヴァルディが生きていた土地だから、バロック音楽は盛んだろうが、残っているのは碌な楽団でないだろう。
「インテルプレーティ・ヴェネツィアーニ。うーん、聞いたことないなあ。1人3万5千リラ。日本円で2千4百円か」
日本より安いから、夜の時間潰しにいいだろうと2枚買った。


 
 サン・マルコ広場に行くと、夕日がサン・マルコ寺院の上半分を照らし、濃い影が広場にかかっている。観光客は余りいない。空はまだ明るいが、刻々とサン・マルコ寺院の影が広場に広がりはじめ、夕暮れが訪れる。


遠い夏に想いを-サンマルコ広場01  夕食を取りにサン・マルコ寺院の裏手に行き、店々の入り口に掲げてあるメニューと値段の品定めしてまわる。途中、小さな版画店が開いており、リトグラフのしおりを2枚買い求めた。店の女主人が「財布には気をつけてね」と、私が釣り銭を財布にしまいポケットに入れる時に注意してくれた。


 

 なにせ、スリや置き引きが多い土地柄だ。72年にローマに行ったとき、置き引きにやられないように、トランクを両股でしっかり挟んでバスを待っていた。後ろから抜き取って行こうとする中年の男と喧嘩になって追い散らしたことを思い出した。「重そうだから、手伝ってあげようとしただけだ」勝手な言い逃れをした。あの頃の旅行ではよく口論をしたものだ。だから、置き引きや詐欺師に気をつけなければ。