「旅情」の冒頭シーンのように - 022 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 1時間半ほど汽車に乗る。緑の草原を抜けて、さらに干潟の上を汽車が進み、ヴェネツイアのサンタ・ルチア駅につく。
「まるで『旅情』の映画みたいね」
ノッコが昔を思い出すようにポツリと呟いた。
往年の名画『旅情』の導入部で、汽車の両側に広がる青い海をキャサリン・ヘップバーンが目を輝かせて見ている光景そのままだ。1955年製作の映画だから、若い人たちは見ていないも知れない。1972年に初めてヴェネツイアを訪れたときは、北のマルコポーロ空港から船で来たので、この鉄道の情景は経験していなかった。


遠い夏に想いを-橋01  サンタ・ルチア駅は相変わらず人でごった返している。満員のヴァポレットに乗りカナルグランデを進む。やがて視界が開けて、運河沿いに色とりどりの家並みが目に飛び込んでくる。そして、華麗な石造りのレアルト橋や木造のアカデミア橋をくぐりぬけて、右手にサンタ・マリア・デッレ・サルーテ教会のドームが見えてきたころ、船はサン・マルコ広場に到着した。 この船着き場はサン・マルコの一番西側にある。夕方だがまだ明るい。それでも店の明かりが点灯し始めている。


遠い夏に想いを-舟溜まり  サン・マルコ広場の西側の狭いハトの糞だらけの通路を抜ける。

「ここには昔、来たことがあるよね」
昔の記憶を手繰りながら、私はノッコに呟いた。
「私もそう思っていたところ」

ノッコも記憶をたどりながら答えた。


 通路を抜けると右側は掘割のようになっていて、今はゴンドラの船溜まりになっている。この先を行けば、72年に宿泊した、名前は思い出せないが「セレナ・・・ホテル」だったろうか、あのホテルがあるはずだ。


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