「美味しかったわね」
「本当に、素晴らしかったなあ。ボリューもあったから、お腹がきついよ」
満腹になってまた中心街を目指して歩き続ける。公園がる。ローマ広場という公園だが、誰も居ない。ヨーロッパのどこの町でも同じだが、日曜日の午前中は人出が極端に少ない。日曜日は安息日だからだろうか。
公園を抜けて、更に行くとドゥオーモ広場にたどりつく。左手にドゥーオモの瀟洒な姿が見える。日曜日で広場の角のインフォメーションは閉まっている。長方形のコムーネ広場を中心にドゥオーモと鐘楼、八角形の礼拝堂とコムーネ宮がある。
コムーネの書店で情報を得るが、さすがに日曜日で、リュータイオ(弦楽器製作者)の店はみな閉まっている。折角、クレモナに来たのだから弦楽器の製作者に会いたかったのに。インターネットでクレモナのヴァイオリン製作の情報は入手していたのだが。
仕方が無いから、コムーネ宮の中にあるヴァイオリンの間に行った。ここに唯一ストラディヴァリが一丁ケースの中に吊るしてある。毎日定刻に音を出すために専門家が訪れるそうだ。楽器は音を奏でなければ、ただの木の箱になってしまう。上手な人が正しい音程で引くことが、特に弦楽器には大切なのである。
コムーネ宮には殆ど来場者がいないが、係りのおばあさんや、若い娘さんや、青年が入れ替わり番をしている。おばあさんはイタリア語で(英語は3人とも駄目)案内してあげようと、『評議会の間』などに連れていって、いろいろ説明してくれるが、ノッコと私のイタリア語を総動員しても難しい歴史の話は半分しか判らない。こうゆう所の係員は英語が出来る場合もあるが、イタリア語しか話せない人が多い。
この部屋の窓はコムーネ広場に面しており、その向うにドゥオーモと鐘楼が聳えている。上階からの眺めは素晴らしい。ここのドゥオーモは12世紀頃から建築が始まったロマネスク・ロンバルディア様式の建物だそうだ。シエナのドゥオーモのように威風堂々としたゴシック建築とは違うが、どことなく奈良の古いお寺を想像させる味わいがある。ドゥオーモの左側にトラッツオという鐘楼が聳えている。こちらはレンガ造りで、ロンバルディア特有の色をしているが、塔の高さは111メートルあり、階段は487段もあるというから、登るのは体力が許さないので、下から見上げるだけで満足するしかない。ドゥオーモに入り一巡する。堂内は荘重で豪華である。