スフォルツア城 - 009 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 スフォルツア城から100メートルほど手前に広い通りが伸びている。フォロ・ブオナパルテ通りといい、この通りに、白いテーブルと椅子を白い木枠で囲って、カフェが歩道にテラスを設けている。日本でこんなことをしたら、間違えなく道路交通法に引っかかって、片付けさせられてしまうだろう。


 ここで昼食をとることにする。客は7~8人。聞こえてくる言葉から判断して、アメリカ人、ドイツ人、スカンディナビア人、イタリア人。私たちはリゾットとサンドイッチにサラダとカプチーノを店で買い、外のテラスに座った。最近日本でも見かけるようになったが、サンドイッチはパンの耳を落として、クッションのように周りをつまんである。イタリアに来てからカプチーノづいてしまった。エスプレッソより飲みやすいし、これが結構美味しい。人通りの余り無い大通りを眺めながら、夏の昼下がりをのんびり過ごす。こんな時間の過ごし方、忘れていたし、東京ではもう無理だろうなあと思う。


遠い夏に想いを-スフォルツァ  さて、スフォルッア城に行く。72年にもスフォルッア城を訪れているが、ミケランジェロのピエタ像以外の記憶がない。もともとヴィスコンティ家の居城であったものを、1450年に時の実力者フランチェスコ・スフォルッアが現在の城に改築したものである。スフォルッア城といえばダヴィンチが思い出される。ミラノに来てスフォルッア家の庇護を求めてこの城に住むのだが、芸術家としてではなく、軍事技術者としての触れ込みなので、ここには何も残っていない。唯一、「白テンを抱く貴婦人」の絵を描いているが、残念ながら、これはポーランドの美術館にある。だから、今度もミケランジェロしか見るものがない。


遠い夏に想いを-古ヴァイオリン  その前に城の博物館を見て回る。リューテリア楽器(弦楽器)のコレクションが結構すばらしい。形が古風なヴァイオリンが一丁特別なケースの中に展示されている。ブレシアやクレモナ以前のものだろうか。多分、今から400年近く前のものだろう。形は、中年のおばさんのお腹みたに中央部に膨らみがある。当時は駒からずいぶん離して弾いていたのだろう。指板には象眼が施してあり、全体的に小ぶりである。どんな音がするのか弾いてみたくなる。


 奥のかなり広い展示室にはチェロからバイオリンまで、バロックものから現代ものまである。ガラス張りのウインドーにびっしり並べられている。壮観な眺めである。弦を二重・三重に張ったヴァイオリンなど、弦に共鳴させるためだろうが、当時のガット弦(羊の腸でできた弦)では直ぐに伸びてしまい、しょっちゅう調弦しなければならいから廃れてしまったのだろう。形は優美だが、余り実用的ではない。