サンタ・マリア・デル・グラツィエ教会 - 006 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 そんな昔の話をしながら、今回は、地図をたよりに歩くのだが、いくら歩いてもそれらしい教会が見当たらない。欧米では路線標示方式をとっているので、道路名を確認しながら歩いていれば迷子にならない。だが歳をとると方向音痴がひどくなり、視力も衰えてくる。


 通りがかりの小太りのおばさんに訊くと、来た方向とは逆だと言う。言われたとおり交差点まで戻ってきて、また判らなくなる。今度は背広を着てネクタイをしめた中年の男性に聞く。同じ方向をさらに行けという。


 ノッコは最初からこっちの方角だと思ったが、私が自信を持てどんどん反対の方角へ行くので黙っていたという。旅行中は夫婦喧嘩をしないことを旨としているのだが、奥様には誠に申し訳ない。


 団体旅行は添乗員任せで楽くだが、海外に行く時はいつも個人旅行で来るから、迷子になるのも致し方ない。友人の中には旅行に出ると必ず夫婦喧嘩になるから、最近は絶対一緒に旅行しないとか、もっとすごいのは、海外旅行中に夫婦喧嘩をして、奥さんが怒って一人で帰国してしまったという人もいる。


遠い夏に想いを-グラツィエ02  やっと教会まで来たら、さあ大変だ。教会の前には延々と長蛇の列。しかも日本の観光客が7割近い。1時間半は待たなければいけない。


 ダヴィンチがある部屋は修復中で入場制限をしている。一度に20人くらいしか入れない。炎天下に立っているのだから暑いことこの上ない。今年のヨーロッパは異常に暑い。かわるがわる教会の側に行って日陰で休む。待っている間、私は教会に入ってみた。


 戦後完全に修復されたそうで、戦後の廃虚と化した写真が展示してある。第二次世界大戦でミラノの街の75%が瓦礫の山になったというから、この教会もその例外ではなかったのだろう。戦争直後の写真を見ると、食堂の壁画のある部分だけがかろうじて残っている。売店の奥には回廊式の庭がある。こんな暑い時には、緑の空間があると心が和む。庭を一周してから、列に戻った。

 ミネソタの遠い日々 - New -
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