トランジット不能 - 095 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 夜10時にロンドンに着いた。ミュンヘンの空港での女性の担当者にも10時発の全日空に乗るから遅れる事を連絡しておいて欲しいと伝えたのだが、そうしますと言った切りで、結局、なしのつぶてだった。飛行機の中でも乗り継ぎの件をスチュワーデスに伝えたのだがこれも駄目だった。前もってフィレンツエで全日空の事務所に行き予定通り搭乗するからと知らせてあったのだが。


 帰国してから、世話になった小さな旅行代理店の恭子さんが笑いながら言った。

「おたくの客がロンドンで搭乗しなかったって、全日空からクレームがきてたわよ」

「私の責任でないので、どうしようもないよ」

私は苦笑してそう答えるしかなかった。


 さて、空港の一番遠い到着ゲートからハアハアいいながら、全日空のカウンターに行ったが、もう電気が消えて誰もいない。全日空の飛行機は定刻通りに飛び立った後だった。英国航空で間借りしている小さなカウンターだが、隣の英国航空の女性担当者に訊いたら、エア・ヨーロッパのカンターに行って対処してもらいなさいと言われて、急いでエア・ヨーロッパへ行った。


 中年の女性職員が乗り遅れた数人の客の対応に出ていた。我々を含め、6人ほどが乗り遅れたようだった。心細くなっている客、怒りが収まらない客など、これらの人たちに応対するのに、夜遅くとも中年の女性職員を当てている。クレーム処理にはなかなかの戦術である。なにせ、激怒している客にも、職員はみな親切で穏やかで心がこもっているのだ。事務的でないのがいい。


遠い夏に想いを-checkers01  結局、ホテル代と朝食代と空港の送り迎はエア・ヨーロッパが持ち、帰りの飛行機便はエア・ヨーロッパが手配するということになった。自分の都合で飛行機に乗り遅れると航空券は無駄になり、もう乗れないのが普通だ。


遠い夏に想いを-checkers02  空港の近くの『チェカーズ・ホテル』まで小型バスで送ってくれた。いかにもイギリスの郊外の小さなホテルという感じだった。ホテルに入ったのは夜中に近かった。夜遅いが、東京は昼間だから、会社に電話を入れ、事情を説明して予定日には帰れない旨を連絡する。ここで一泊して、小さなホテルの可愛らしいピンク色のダイニング・ルームで、久しぶりのイングリッシュ・スタイルの朝食をとった。


遠い夏に想いを-ガトウィック  早朝、ガトウィック空港まで送ってもらい、ここで英国航空の搭乗手続きを済ませて、ヒースロー空港へバスで移動した。


 空港のロービーの椅子に座って考えた。今度の『センチメンタル・ジャーニー』は廻り切れないところが多かったが、これで、もうヨーロッパで「迷子になるという、おかしな夢」は見ることもなくなるだろう。


 これで、「遠い夏に想いを」のイギリス編とフランス編は終了します。独断と偏見に満ちた紀行文を読んでいただき有難うございました。


 この後、ブログはやはり独断と偏見に満ちた「イタリア編」に続きますので、更に続けて、読んでいただければ幸です。