フィリップはレンヌ大学の農業経済の教授で、今は学部長を引受けており、管理の仕事にも精を出している。年齢は判らないが、多分50才くらいだろう。モニックは48才くらいか、昔から老けた感じだったが、当時と余り変わっていないので、今はむしろ年齢より若く見える。欧米では年齢を尋ねる習慣がないので、私は彼らが幾つかは知らない。シャンタルを含めて3人の子供がいる。ここのレンヌの家で2人子供と暮らしている。我々は玄関脇の小部屋にこの夜泊まった。
シャンタルは22才。パリ大学で国際経済学を勉強している。卒業後は企業の国際関係のアナリストとしてキャリアを積みたいという。ジョンはロー・スクールを卒業したばかりのアメリアカ人で、ボストンの法律事務所で仕事をしている。夏の休暇でフランスへ来ている。シャンタルとはどの程度の関係かは知らない。
タルティーニはシエナ大学の教授で、イタリア人にしては細身で背が高く、いかにも大学の教授風。年齢は不明だが53才ぐらいだろうか。婦人は静かなほうだが、やはり、イタリア人。キリリと一本筋が通っている感じだ。
さて、食後のデザートの時間になってから、話題が国際政治に展開し始めた。日本では食事の時は政治の話、特に国際政治が話題にのぼることは希である。国内政治でも自民党の派閥争いか選挙時の予想ぐらいで、メシや酒の席で政治の話はタブーだ。女性が居る席ではなおさらである。
丁度、この年(90年)の8月上旬にイラクがクエートに兵を進めた直後であった。ヨーロッパと中東との関係は地理的にも人種的にも、古代ギリシャの時代から親戚同士の関係みたいだ。キリスト教だって中東のユダヤが発祥の地で、西暦70年に国が自滅して各地に散ったユダヤ人がおこしたユダヤ教の一派に過ぎない。
中東と日本は石油の取り引き以外、全く関係がないと日本人は信じている。そして、中東への理解は欧米からの情報と欧米の価値判断に基づいている。日本人はそのような価値基準で自分達が判断していることさえ気づいていないのが現実だ。