ランス川 - 071 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 私達はクリスチャンではないので、8月15日が『聖母マリア被昇天祭』で、祭日とは知らなかった。私達にとって8月15日は敗戦記念日か、同じ宗教的な意味ではお盆であることしか頭にない。フィリップが今日大学に出なくてよいのは夏休みのせいだと思っていた。モニックの仕事は毎日ではないだろうけど、たまたま、今日はオフの日かと思っていた。


 フランスの祝日は日本に比べて日数が少なくて12日しかない。というより、最近の日本では訳のわからない祝日がやたらと増えて16日もある。日本では休みが取れないので、国民のために祝日を増やすしかないのかも知れない。たぶん、フランス人はヴァカンスを1ヶ月ほどもとるので(最近では1週間から10日ほどしか取れない人も多いらしいが)、休日は十分なのだろう。


 聖母マリア被昇天祭で、もしかして、ブルターニュ独特の衣装や装束が見られるかと、心を踊らせたが、老婆の頭には白い長い帽子はなかった。町の名はベシェレル。レンヌとディナンの中間に位置していいる。かつては麻織物で栄えた小さな村である。大勢の村人が小さな町にドッとくりだす行事に巡りあうのは初めてだ。『観光客』は我々しかいない。町の様子も住む人達の様子もいまだに素朴そのものだ。何か素朴で信心深い田舎の生活の一端をかいま見た思いだ。


 3時を過ぎた。ランス川にかかる石橋を渡る。眼前の切立った丘の上にはディナンの町だ。城を建て、町を造るには戦略的に最高の地形だ。


 フィリップは駐車場捜しに街を一周する。今日は祭日とあって結構な人出だ。観光客もかなり来ていて、町中の広場や通りは賑わっている。中心街に入ると狭い車道に人が溢れて車が進まない。天候が思わしくなく、まだ3時半なのに、辺りは薄暗くなってきた。旧市内の駐車場は一杯で、結局、ランス川を越えてもとへ戻ってしまった。


遠い夏に想いを-lance

 ランス川の眺めは素晴らしい。この辺りはランスが溪谷から川に変わる境目にあたる。川に沿って小さな石造りの家々が並び、川岸には色とりどりの小船やヨットが繋がれている。まるで絵か写真の景色そのままである。緩やかな流れの川面は鏡のように対岸の家々を色のモザイクにして映している。ゆったりとうねる小さな波が万華鏡の中ので揺れるイメージのように色と形が変わる。ここから、ボートに乗って大西洋まで下っていったら、どんなに素晴らしいだろうか。ランスの河口には金持ちの保養地として有名なサン・マロやディナールがある。

 ミネソタの遠い日々 - New -
1970年の夫婦子供連れでのミネソタ大学、留学記録にもどうぞ