日本を発つ前の計画では、ブルターニュとノルマディーの境にあるモン・サン・ミシェルを回ってレンヌに来るつもりだった。しかし、このルートだと汽車の便が悪く時間が掛かり過ぎる。パリからの電話でフィリップの返事は「モン・サン・ミシェルはやめて、とにかくレンヌへ来い」であった。結局、モン・サン・ミシェルは諦めた。
再び車の中でモン・サン・ミシェルの話になった。
「モン・サン・ミシェルは日帰り出来ない距離ではないが、着いてからが大変だ。夏のヴァカンスで観光客が溢れてる。駐車場を探すのが無理、修道院までバスしかないし、これがまた時間が不規則で当てにならない。とても夕方までは帰れないんだ」
ロンドンでチャールスと同じようなやり取りをしたのを思い出す。
「モン・サン・ミシェルは諦めたよ。ここらの近くで城があるところがいい。ブルターニュ的な趣のあるところでね」
「ディナンかディナールかサン・マロだけど」
「ディナンがいい」
車は国道から地方道に入った。雲が少し切れて、柔らかい陽射しが広がり始めた。この辺りは緑の野原があちらこちらに点在している。道の両脇に一直線に木々が立並ぶ。なにか映画のなかで見たような洒落た並木道だ。車のフロントガラスにちらちらと太陽光があったて、明暗の陽射しが眩しい。右手には広大な自然と森に囲まれた水辺の古い館が並木の合間から顔を覗かせる。人手の入らない自然はイギリス的だが館のたたずまいは違う。フィリップの車はエアコンが利くので、ロンドンでのチャールスとのドライブよりは静かで快適である。
パリを発つ前に、レンヌ周辺の観光地のことはガイド・ブックで読んでおいた。レンヌはブルターニュの東の入口にしか過ぎない。本当のブルターニュを知るには西のカルナックやカンペールの『地の果て』まで行かなければならないのだが、行く時間がないので諦めるしかない。
ミネソタの遠い日々
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