ブルターニュ - 067 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 満腹感には乏しいが充分満足のゆく昼食だった。一度フィリップの家に戻って、それから出かけることにした。


 車は市内を抜けて自動車道に入る。緩やかな丘陵地帯が一面に広がる。灰色の雲が白さを増しながら地面を這うように低く流れてゆく。土地は寒々とした荒れ地である。冬には雪が大地を覆ってしまうのかと思いきや、意外に、雪は殆ど積もらないという。ポール・ゴーギャンの描いた雪のブルターニュの絵があったような気がするが。確かタヒチに移住する前にブルターニュのポン・タヴァンに住んでいた頃の作品だ。いかにも陰鬱なブルターニュの田舎の風景画である。


 最高気温と最低気温の差が余りないから、日本人からすると最高の避暑地なのだが、ヨーロッパ人にとっては夏のヴァカンスは避暑が目的ではなく、むしろ太陽を求めての南下だから、ブルターニュでも海に面したサン・マロなどの保養地以外は来る者がいない。


遠い夏に想いを-renne07  レンヌの北へ6キロほどのところに、ルイ達が住む、古い教会と小さな集落を核として開発された比較的新しい住宅地域がある。充分な幅の車道と両側に歩道があり、道は意図的に不規則に入り組んで、町の景観にゆとりを与えている。家々は大きさや間取りが違うからデザインが異なる。しかし、どの家にも共通した特徴があって、屋根は天然のスレート葺で傾斜がきつく、壁はベージュ色で統一されて、新しいブルターニュのイメージが感じられる。町には落ち着いた大人の雰囲気が満ちていて、共通する様式が存在することの大切さが分かる。


「今日は帰ってきてから家で夕食をとるけど、いい?」
フィリップが家に入りながら言う。
「タルティーニ夫婦も一緒にね。それに、夜にはシャンタルも来るわ」
「シャンタルが帰ってくるって?」
私達は思いがけないことに嬉しくなった。シャンタルに会えるなんて、ミネソタで別れてから18年振りだ。モニックが料理の段取りを見届けて、私達は再び車で出かけることにした。

 ミネソタの遠い日々 - New -
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