ガレット - 065 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

遠い夏に想いを-市庁舎  そのまま旧市街を車で進み、市庁舎の近くの路上に車を駐め、旧市内を散策して歩いた。ヴァカンスの季節とはいえ、レンヌまで観光に来る旅行者は少ない。石畳の路面は雨に濡れて、薄暗い空模様は一段と古い街に陰鬱な影を投げかけていた。観光シーズンでも人が来ないから、旧市街の大半は店を閉めてヴァカンスで出掛けてしまっている。一層人影がない。


 日本には「旧市街」というものがない。町全体が旧市街的に生き延びている町はある。旧と新がモザイク模様で混在している町もある。これは木造建築が理由だろう。簡単に古い建物を壊して、新しく建て替えてしまうからだ。


 フィリップがブルターニュ風に昼食を取ろうと言い出した。旧市街には無数のレストランがある。15世紀頃の古い石造りの建物の狭い入口を入る。中は天井が高く薄暗い。一瞬ひんやりと冷たい空気が肌を包む。白木のシンプルなテーブルや椅子が整然と並んでいる。何か日本の古い蕎麦屋に入ったような錯覚を覚えた。「へい、何んにしやすか」と江戸子訛で声が掛かりそうな気配さえ感じる。


遠い夏に想いを-ガレット02  クレープかパンケーキ。クレープリーだから選べるメニューはこれだけ。クレープには普通の小麦粉のものと蕎麦粉のものと2種類あって、蕎麦粉のものはガレットという。クレープとは呼ばない。ガレットはブルターニュの名物である。メニューにはリンゴだの、アプリコットだの、幾種類かのソース(詰物)、生ハム等の名前が載っている。所詮はクレープだから、どんな姿・形かは想像出来るが、味の方はフィリップとモニックのお薦めに頼らざるを得ない。とにかく、ブルターニュまで来たのだ。最もブルターニュ的な味を試したい。飲物はやはりシードルでゆこうとフィリップが言う。

遠い夏に想いを-ガレット01  14年ほど前に東京の神楽坂の坂を上ったところに小さなガレット屋が開店した(上の写真は神楽坂店)。当時、ガレット専門の店としては日本で最初だったかも知れない。確かフラスン人のシェフが焼いていたと思う。ブルターニュ名物とうたっていたが、生地が厚く、余りにもモチモチしていて美味しいとはいえなかった。今は同じ場所に同じガレット店があるが、味は全く違ってとても美味しい。ここと同じパリ店の系列の店が新宿(下の写真は高島屋店)、原宿、赤坂、横浜、名古屋に現れた。クリスピーさとモチッと感の兼ね合いが難しいところだが、これらの店で出すガレットは「更科そば」みたいに上品な味がして美味しい。