今日はいよいよレンヌへ出発する。大きなトランクは部屋にそのままにして、チェック・アウトせずに出掛けた。一晩無駄になるが、この方が何かと便利だ。モンパルナスからは9時20分の出発だし、駅には昨日来て様子は分っていたので、充分に時間の余裕があった。
朝食はモンパルナスの駅の近くで取ることにした。昨朝はまだ掃除中だった駅前広場に面したカフェが開いていた。
店内のカウンターでコーヒーを立ち飲みしている労働者風の男、テラスのテーブル席では痩せて日焼けした中年女性がタバコを吸っている。隣のテーブルでは娘と母親が簡単な朝食を終えてそそくさと出て行く。これから汽車に乗るのだろうか。閑散とした朝の静けさの中にも、何か慌しさを感じる雰囲気だ。
あいも変わらずコーヒーにクロワッサンである。昨日の店よりパンもコーヒーも一回り大きめだ。味も悪くない。何か徳をした気分になる。知らない土地では、こんな詰まらないことで不安と満足感が交差し、一喜一憂するのだ。
ここのテラスからはモンパルナスの駅前広場が見渡せる。モンパル駅はパリ改造計画の初期の作品だ。しかし、こんなに味気無い無機質的な建物を到底フランス人が文句なく受入れたとは思えない。30年代に構想が練られたモンパルナス駅都市再開発計画に基づいて60年代後半にはほぼ建替えが完了した。昔パリに居た72年にはモンパルナスの駅はほぼ完成していたが、部分的に仕上げ工事をしていたので駅構内は雑然としていた記憶がある。今は更に当初の計画通りモンパルナス・タワーが出来て一段と変貌を遂げた。百年以上も前にエッフェル塔が出来たときにも、パリ市民は反対したのろうが、今ではパリの象徴的な構築物になってしまったから、このモンパルナス・タワーも街の景観に馴染む日が来るのだろ。
私達がいた当時は、パリの西にあるデファンス地区の開発が始まったばかりで、巨大なクレーンが何本も空に聳えていて、パリの景観を損ねていた。