サン・ミシェル通り - 056 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

遠い夏に想いを-アルシュ橋  サン・ルイ島に戻って、川岸をサン・ルイ橋まで歩く。シテ島に渡ってそのまま通り抜け、ポン・ドゥ・アルシュヴェシェ橋を渡る。大司教(アルシュヴェシェ)橋と名付けられているのだから、ノートルダムと関係があるのだろうか。背後から眺めるノートルダムは目前に迫って一段と迫力がある。ノートルダムの壮麗なゴシック寺院の特徴がよく見える。後ろ姿が美しいノートルダムを見るための展望台みたいな橋だ。ただ、ローザン橋からの眺めも捨てがたい。広々とした全景が望める。(前ページの写真)


 アルシュヴェシェ橋を渡って、左岸をサン・ミシェルまで歩く。川岸の露店は当時より数が幾分少なくなった。その昔、セーヌの名物などと親しまれ、結構の掘出し物も時には有ったらしいが、18年前でさえも、並んでいる『古書の類い』は取るに足らない物ばかりだった。と言っても、東京の神田の古本屋街でも扱っている書籍はピンキリだ。だから、たまには珍本などが出て来るのだろう。屋台の権利が代々継がれるそうだから、風物詩としてこれからも残してほしいものだ。


 途中のプチ・ポンでひと休み。その名の通りパリのセーヌに架かる橋の中で一番小さな短い橋だ。同じ橋の上で長い髪のノッコの写真を18年前に撮ったはずだ。チャオと一緒の写真だと思うが、もう一度ノートルダームを背景に撮って比べてみよう。このことはノッコには内緒。


遠い夏に想いを-サン・ミシェル  サン・ミシェルの角にある書店に入った。本屋があると直ぐ入る。といっても、本の虫ではない。本のウインドー・ショッピング専門である。立ち読みとは違う。何か新しい本はないか、役に立つ本はないかと覗き回るだけだ。だから古典文学の類いはゼロ。読み終わったら何の役にも立たない本か、辞書、参考書、資料の類いの無味乾燥な本がやたらと増える。


 この書店は本屋というよりは、本のスーパーと呼ぶに相応しい店だ。ドアを押したらチャリンとゆうフランス的な趣はゼロである。東京でも神田の昔ながらの本屋以外はみな新しくなったのだから、パリでも書店の形態はどんどん変わっていくだろう。時代の流れというものだろう。


 ノッコがスエーデン語の辞書・参考書の類いを買入れた。日本では英、仏、独の書籍は何とか手に入る。あとはスペイン語が幾分ましだが、その他の外国語は小さな辞書か語学テープが売られているだけで絶望的である。


 日が暮れてきた。今日はかなり疲れた。余り食欲がない。本当なら一度ホテルに戻って身仕度をして、二つ星のレストランにでも出掛けたいところだが、とてもそんな元気は無い。ロンドンと同じに成ってしまった。と言っても、何か食べない訳にいかない。この辺には、裏通りに何かあると思い、ダントン通りを歩いてみた。