アイスクリームが食べたい - 050 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

遠い夏に想いを-ラミラルムシェ  アレジア通りの手前でラミラル・ムシェ通りへ出る。この通りにも店が数店あった筈だ。但し、当時はこの通りで買物をした記憶が殆どない。しかし、気のきいた菓子店があったのを覚えてた。当時は、苺や洋梨のタルトが色鮮やかに通りのウインドーに並べられていた。お金も無かったし、タルトも余り好物では無かったので、ウインドーを覗くだけで、一度も買ったことはなかった。


 今日は結構暑い。アイスクリームの垂れ幕が出ている。
「アイスクリームが食べたい」
ノッコの声にせかされ冷蔵ケースを覗く。残念ながら、中は空だ。ヴァカンスの真盛りでこんなに町が閑散としていては客も来やしない。
「残念でした。でも、フランスのアイスクリームなんてたいして美味しくもないさ」
 慰めの言葉にもならない。


 昔、ある天気のよい日に、チャオとヴァンセンヌの森へ出かけた。チャオがアイスクリームが食べたいと言うので、屋台でアイスクリームを買って食べた。まさにシャーベット(Sorbet)のような代物だった。当時、私達はアメリカのアイスクリームに馴れ親しんでいたため、フランスのアイスクリーム(Glace)は味もそっけもなかった。


 このラミラル・ムシェ通りを真直ぐ歩いて、左に曲がってしばらく行くと海外発送の取り扱い店があった。当時、帰国する際にかなりの手荷物を日本に送り返した。数か国を廻って帰る予定だったので身軽にしておきたかった。重くてふうふう言いながら荷物を運んだ記憶がある。


 アイスクリームは諦めて、アレジア通りを渡った。角にカフェがある。余りぱっとしない店だったが、今日は閉まっている。ペンキの剥げかかった外壁と、ヴァカンスの告知がないのに、ガラーンと人気のない気配からして、むしろ、店をたたんでしまった感じである。


 今は禁煙してしまったが、当時、よくここでタバコを買った。カフェでコーヒーを飲んだのは数えるほどしか無かった。ロンドンのチャールズやバーミンガムのハリーへはここから電話をした。カフェの利用方法はいろいろとある。コーヒー、軽食、タバコ、トイレ(勝手には入れないが)、それに電話だ。当時、フランスは電話事情がよくなく、日本に比べてどこにでも電話ボックスがあるという状態ではなかった。イギリスに電話をするのに、どこから掛けてよいのか見当も付かなかった。

 ミネソタの遠い日々 - New -
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