大学町 - 049 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

遠い夏に想いを-大学町  当時,INODEPに越して来る前にシテ・ユニヴェルシテを訪ねたことがあった。安全で安い宿泊施設を捜していたからだ。ここには日本館、通称、薩摩館がある。空きがあったら潜り込もうと思ったのだが、既に順番待ちの予約が気の遠くなるほど入っていた。この大学町を散歩するのは楽しい。しかし、初めて来た時は、楽しいいというよりも、驚きの方が大きかった。


 アメリカでも大学町はいくつか見た。ミネソタ大学にはミネアポリス・キャンパスのそばにディンキー・タウンと呼ばれる小さな学生町がある。隣のウイスコンシン大学があるマディソンにも大学町がある。東部のプリンストン大学の大学町にも素敵な通りが走っている。ハーバード大学はケンブリッジ大学をモデルとしてキャンパスが作られているので大学城下町がある。ハーバードは歩くだけでも楽しい。


 市街地にあるパリ大学にもサン・ミシェルやサン・ジェルマン・デプレがそれに相当するのだが、ここのシテ・ユニヴェルシテはかなりその趣を異にしている。学生の収容施設だけの町である。それでこれだけの規模を有するのは珍しい。豪華で国際的で、その上、大変に開かれた雰囲気がある。


 今日は構内を歩いて回る時間がないので、このまま来た道を引返すことにした。橋を渡りモンスリー公園の高台に戻る。池に沿って左手の散歩道をゆっくりと下だって行く。当時より手入れが行届いて清潔で明るくなった。今年の夏は子供達の叫び声が聞こえない。あの頃は、小さな子供達の騒ぎ回る足音や泣声が響き渡ったものだ。


遠い夏に想いを-パン屋  公園の門を出た。地下鉄の駅まで戻ることにした。かつて、毎日歩いた道だ。ここからは緩やかな坂道が下っている。通りの左側にあるパン屋は夏のバカンスで休業中。今はすっかり洒落た店になっているが、当時、ここのパン屋は私達の行きつけの店で、中年の栗毛でふっくらした顔のおかみさんがいつも店を切り盛りしていて、愛想よく長いバケットを裸のままヌーと手渡してくれた。フランス人はパンを紙袋に入れたり紙でくるんだりせず、裸で持ち歩くものとは話では聞いていたが、自分で初めて体験してみて一瞬途方にくれた記憶がある。この界隈としては当時から小綺麗で清潔なたたずまいの店だった。パンをかじりながら歩こうと思ったのだが、パン屋がヴァカンスで休業では仕方がない。

 ミネソタの遠い日々 - New -
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