有料トイレについては思い出がある。1970年9月21日、初めての外国の地であったサンフランシスコ空港に着いて、ミネアポリス行きのウェスタン航空を待っていた時だった。チャオがトイレに行きたいと言だした。初めての外国だった。
「トイレくらい、1人で連れて行ったら。英語が分るんだし」
私は飛行機のなかで眠れなかったので、頭がぼーっとしていた。
ノッコはチャオを連れて席を立った。当時のサンフランシスコ空港はターミナル内に赤い奇妙な鳥居があり、ロビーは狭いが高い鉄骨と明るいガラス天井になっていた。月曜日の朝だった。まだ出発までには相当時間があったせいか、人影がなくガラーンとしていた。
しばらくして、ノッコが慌しく戻ってきた。
「トイレに鍵が掛かっていて入れないのよ。有料で10セントなの。しようがないから戻ってきちゃった」
トイレが有料だとは気がつかなかった。ドルではお金を渡していなかった。小銭を持ってママはチャオをつれて再び姿を消した。今度は戻ってきて、ニコニコしながら腰を下ろした、そして小銭を差し出した。
「無料のがあったの」
「そうか、じゃ、男子用はどうなっているか行ってみよう」
時間潰しに出掛けた。確かに有料と無料があった。
アメリカでは空港、バス・ターミナル、駅等の公共的な場所のトイレは意外と有料が多い。おまけに公共トイレも企業のトイレも〔男性用も女性用も)物凄くた高い位置なので、背丈の低い日本人はつま先たちしなければならない。日本の場合は有料と無料のトイレは入り口が別々になっている。でも有料トイレは立派で清潔だが数が少ない。トイレには72年にイタリアで面白い経験があるが、この後のイタリア編でお話しようと思う。
しかし、パリではカフェに入ってコーヒーでもとればトイレを無料(勿論、チップを置いたほうがいいが)で使えるが、そうでなければどこへ行ってもお金を取られる。昔あった「エスカルゴ」と呼ばれていた公衆トイレも見かけない。有料トイレには大抵太った女性が番をしている。さて、話がまるで脱線してしまった。