最大の違いは水だと思う。誰でも知っていることだが、日本の水と違ってイギリスの水(ヨーロッパの水はみなそうだが)は、かなり強い硬水である。マグネシュームやカルシュームの含有量が多く、日本の水より5倍も多い。日本の水は硬度が20から60。30くらいが標準だろう。これに反して、ヨーロッパの水は100から150はある。このことはコーヒーの入れ方にも当てはまる。
丁度、日本でアルミかアルマイトの薬罐でお湯を沸かして入れた紅茶と同じ感じである。硬水用にブレンドされた茶葉であっても、イギリスで紅茶を入れるのは大変難しい事なのだと思う。余り通ぶったことを述べるやからが多いから、こうゆう連中はよくジョークで茶化される。しかし、硬水は沸かすと、ひどい場合、白濁してしまう。だから、お湯の沸かし具合、茶葉の選択、ポットの形、ミルクの種類、砂糖の入れ具合、と気を使わないと美味しい紅茶が出来ない。
ついには、ミルクは先か後かまで言出す。王室では先だとか、自分の家では昔から後だとか、一見ナンセスに近い論争まで起きるが、これも一概に馬鹿げていると言えないのかも知れない。その昔、ボーンチャイナなどの陶磁器以前の茶器は質が悪く、熱湯を注ぐとひびが入ることが多かった。だから、冷たいミルクを先に入れるのが合理的なのだ。その習慣が現在でも残っているのではないだろうか。
極論すれば、イギリスの水では脂肪分の多いミルクと砂糖をたっぷり入れないと紅茶は飲めないのである。だから美味しい紅茶を入れるには充分気を使う必要がある。
その点、日本の軟水では面倒なことは一切不要。輸入紅茶葉のブレンドは軟水用なのかどうか分からないが、それでも、なんだかんだと御託を並べる奴がいたら、「このあほが」という顔をして相手にしないことだ。
18年前に来た時はチャールズの家ではお母さんが紅茶を入れてくれた。ポットやら布製の保温カバーとかストレーナーなど、結構うるさい事を言いながら入れてくれた紅茶はとても美味しかった、ミルクはかなり濃く、脂肪分はミルクとクリームの中間くらいでジャージ種を使う。当時は日本でジャージ種のミルクは手に入らなかった。
ミネソタの遠い日々
1970年の夫婦子供連れでのミネソタ大学、留学記録にもどうぞ