パブの営業 - 061 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 パブは地域のインフォーマルな集会所の役割を果たしているから、よそ者が入り込むと、どうしても違和感と緊張が生まれる。特に辺ぴな田舎のパブは閉鎖的だ。店の壁にはこの地域のクリケット・チームやサカー・チームの写真や表彰状が貼られている。何かがあれば村の人達はここに集まって、グラスを片手に楽しい会話に時を忘れて過ごすに違いない。


 パブ専門のチャールズだが、営業時間の規制だけは彼にもどうにもならない。イギリスのパブは営業時間が厳しいように見受けられる。平日は朝の11時から夜の11時まで営業しているが、日曜日は昼の12時から3時までと、夕方は5時から夜の10時まで開いている。地域によっては12時から10時まで閉めずに営業するところもあるらしいが、結構きちんと守られている。


 この営業時間の規則は第一次世界大戦中に制定された酒類販売免許法に基づいている。産業革命で社会の構造やシステムが激変した19世紀のイギリスはアル中天国であった。20世紀になって貧困者層のアル中は減ったものの、アルコールに対する寛容さは社会の底辺に残っていたに違いない。戦時中の士気高揚の意味もあっただろうが、アル中対策が本音であったらしい。だから、客にも規制があって、店で酩酊してはいけないとか、結構きびしいらしい。規則を破ると営業免許を停止されるので、確実に効果があった。戦時中の時限立法にも拘らず、いまだに効力を発揮し続けているし、誰も文句や不平を言わないのは、いかにもイギリス的ではないか。
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 さて、腹ごしらえも出来たし、のんびりしている暇もないので店を出た。ビーヴァー城がある丘の登り口に駐車場がある。車を駐車して、受付で入場料を払い、頂上の城まで急な坂道をゆっくり歩いて登った。まわりは高い木立に囲まれ、頂上近くまでこないと城の姿は見えない。昼を過ぎてから雲が少し出てきた。晴れているが、時々太陽が雲に隠れてあたりが薄暗い感じになる。7~8分ほど登ると右手前方に黄色い円筒型の城の塔が見えてきた。

 ミネソタの遠い日々
1970年の夫婦子供連れでのミネソタ大学、留学記録にもどうぞ