オックスフォード通りの靴屋もカバン屋もみな安物ばかり並べている。一流どころが軒を連ねるのは、もしかしたら、オックスフォード・サーカスからボンド通り、マーブル・アーチまでの西側の方かもしれない。こちら側にはトップマン、セルフリッジ、マークス&スペンサー、C&A、D・H/エバンス、ジョン・ルイス等のデパートがある。
そういえば、何年か前に、チャールズがまだ商社にいた頃、マークス&スペンサーの担当者を何人か連れて仕事と接待で東京と京都へ来たことがあった。あの頃はマークス&スペンサーがこれ程の大手とは知らなかった。
今回は、オックスフォード通りでもリージェント通りでもデパートには入らなかった。デパートは所詮デパートにすぎないし、時間の無駄であった。「旅行とは貴重な時間をいかに有意義に無駄な時間に変えるかのプロセスである」と思いつつ、つい時間との競争に終始してしまう。情無いことおびだしい。
ホテルに戻ると、ロビーの様子がおかしい。団体旅行とおぼしき20人ほどの中年の男女がワイワイ・ガヤガヤと声を張上げてロビーの真中を占拠している。例によってスペインからの団体かと思ったが、よく聞いていると、イタリア語を喋っている。どこから来たのか尋ねると、肉づきのよい元気な中年の女性が答えた。
「トスカナ地方よ」
「私達もこの後フィレンツェに行く予定なんですよ。ピサかシエナかボローニャへ足を延ばそうかと思っているんですが、日帰りだと、どこがお薦めですか」(写真はシエナのドゥオーモ)
「シエナがいいわよ」
みな同じ答えだ。彼等のお薦めはシエナなのだが、理由があった。ボローニャは日帰りには街が広すぎる。ピサは斜塔と寺院以外あまり見るところがない。東京でも会社のイタリア人に同じ質問をしたが、返事は彼らと同じだった。
「よし、やっぱりシエナに行こう」
私はノッコに言った。
ミネソタの遠い日々
1970年の夫婦子供連れでのミネソタ大学、留学記録にもどうぞ