バーミンガムの思い出 - 049 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 イギリスでの3泊5日の滞在をどう使うかは、日本を出る前に一応は考えていた。ロンドンは72年の足跡をたどるセンチメンタル・ジャーニー。残りは地方へ行きたかった。


 1972年には、ジェーンとハリーに会いにノッコとチャオの3人でロンドンのユーストン駅から汽車に乗りバーミンガムへ行った。車窓から眺める美しい緑の牧草地と羊の群れ。その先に見える教会の塔。まわりに広がる森や林。延々と続く丘陵地帯。道は時々線路を横切って、曲がりくねっている。ゴトンゴトンとゆれる汽車。がらーんと空いた車両。小さな女のこと男の子。姉弟だろうか、楽しそうに戯れている。今でも、この光景は目に浮かんでくる。


 当時、ジェーンとハリーはイギリスを発ってアフリカやその他の国々に滞在しながら東京にやってきて、東中野のアパートに腰を落ち着けたばかりだった。1965年頃だったろうか、ノッコがジェーンと出会った遠い夏に想いを-jill のは丁度そんな頃だった。背が高く大柄なジェーンはセラピストの資格を持っていて、板橋の養護園で働いていた。いつも明るく快活で、てきぱきと喋り、行動的だった。ハリーは上知大学で日本近世の政治史を勉強していた。ウエールズ出身で、小柄なケルト的な風貌をしており、静かで神経質なタイプだった。彼らが住んでいた小さなアパートには洗濯機がなく、夜には我々の小さな間借り部屋に洗濯ものを持ってくる。チャオがまだ小さく、1才くらいだっただろうか。そんなチャオを連れて、ジェーン達と箱根にも行った。ハリーがバスの中で、私のことを「ヴィオ、ヴィオ」と大声で叫ぶので、乗客が全員振り返り恥ずかしい思いをした記憶がある。

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