高いなあ、でも入らなきゃ - 038 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 寺院に入るのを諦めた。途中に小さくて目立たないが、なかなか素敵な聖マーガレット教会がある。今の建物は遠い夏に想いを-聖マーガレット 15世紀から16世紀にかけて完成したものだが、もともとはウェストミンスター教区の教会として12世紀に建立された古い教会である。ここは結婚式の名所らしく、過去に多くの有名人が華燭の典を挙げている。詩人のミルトン、政治家のチャーチルもここで式をあげた。1972年に中に入っているが、残念ながら今回は時間が無いので素通りだ。
 駆足旅行で目が回りそうだ。半日でセンチメンタル・ジャーニーをやろうというのだから無茶だ。
 次はロンドン塔を目指す。ウェストミンスター駅からなら、タワー・ヒル駅までサークル・ラインに乗ってもディストリクト・ラインに乗っても乗換えなしで行ける。タワー・ヒルの駅はロンドン塔の入口の真裏に位置する。かなり歩かなければならない。もう3時を過ぎていた。少し急がなくては日が暮れる。右手の通路をテムズに向かって進んだ。
 ロンドンやパリでは京都と違って名所旧跡で入場料を取られることが余りない。しかし、ここの入場料は桁違いに高い。切符売場の料金表を見て一瞬戸惑った。ロンドン塔を見るのでなくて、思い出を見に来たのだから、今回はどうしても入らざるをえない。遠い夏に想いを-ビーフィーター
 1972年にここへ来た時の写真を見ると、チャールスのお母さんはかなり疲れた様子で写っている。元気なのはチャオだけだった。赤黒のコートを着た老年のビーフィーターと訳の解らない会話を無心に交わすチャオの楽しそうな笑顔。『何故ビーフィーターっていうのか』と聞いたのだそうだ。英語は「牛」(Cow)を食べるとか、「豚」(Pig)を料理するとは言わない唯一の言葉だ。北方のバイキングがフランスに攻め込み、ノルマン領を与えられて定住した。更に、1066年に王位継承問題でノルマンがイギリスを征服したとき、イギリスの王様はフランス人で英語が喋れなかった。ビーフもポークも元はフランス語から来たのだ。
 ビーフイーターとは「ビーフを食べる人」ではなくて、英国王の護衛を任された人たちなのだ。思い出は限り無い。あの時はさほど混んでいなかったので、ここで見学できる箇所は殆ど全て見てしまっていた。

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